冥府と花の騎士 (ページ21)

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【本編】冥府と花の騎士１５　※5/15公開ページ21

そんなことがあって少し我に返った私は、なんだか自分の言動があとになって恥ずかしくて、ぼんやりと窓から外の景色を眺めていた。

　あんな大層なこと言ってのけちゃったけれど…。これから、どうしよう。第一、私は一体いつまでここにいられるのか…。帰る場所、だってないし…。

「身体の具合は、どうかなA」
　その時、背後から優しい声がして、はっと振り返ればそこにはオウケンさまがいた。
　
「…オウケン、さま」
　ぺこ、と小さくお辞儀をする。鍛錬をしていたのだろうか。騎士の恰好をし、片手に鎧を抱えていた。
「本当に…元気になってよかった」
　オウケンさまは、跪くと私の目線に合わせて言った。
「君には…なんと声をかけたら良いのかは、分からないが…」
　そう語る黒曜石のような瞳には、静かな炎が揺らめいている。
「せめてもの…罪滅ぼしを、させてほしかった」
　勝手、かも知れないが、とオウケンさまは付け加えた。
「もう、君たちのような犠牲は出さない。約束する」
　そう言って私を見つめるオウケンさまの目は真っすぐだ。やはり…兄弟同じ目をしているなと思った。

　デスハーさまと、そっくりだ。

「兄者、…デスハー王が、必ずこの国を変えてみせるから」
　何かを思っているのか、怒りのような思いと、それに対する強い意志。そんな瞳が、私を見つめていた。私は、小さく頷いて見せる。

　やはり、何かあの戦争で思いつめるようなことがあったのだろうか。けれど、確かに分かることは、私を救ってくださったのはこの方々なわけで。どんな犠牲を出そうとも、私はあなたたたちに救われたのだ。だから、そんな風に自身を責めないでほしい。もっと胸を張り、誇っていいのだ、と。

　でもそうは、言えなかった。

　そしてオウケンさまは柔らかく微笑むと、「少し、来てくれないか」と言った。

　言われるままに、オウケンさまの後ろについて歩く。カチャカチャと鎧の擦れる音がした。デスハー王よりは、一回りほど小さいけれど、それでも大きくて逞しい背中だった。騎士団の方々が、慕ってこの方に着いていこうとする気持ちがわかる気がする。

　この人もまた、背負っているのだ。

「あの、この先…」
「少し城の外に、出てみないか」
　え、と私は声を出す。城の、外に…。それは私にとってはあまりにも現実離れしていたことだった。もう、外での出来事だって覚えていないし、町での様子も、記憶にない。どんな家で過ごしていたとか、家族のことも…。