【本編】冥府と花の騎士 8 ページ14
伝えたかった。生きて…いて欲しいと。その、思いを。
そう願う人間がいることを。そしてそれが、一人だけではないことを。
『彼女が元気になったら、オレはしてあげたいことがあるんですよ』
『あの子に希望はもうないのかも知れない…。ならば、作ればいいのですよ。私たちで』
あぁ、いつだって、迷う時に光をくれるのは、弟たちだ。
花の、香りがしてデスハーはふと顔を上げた。
気付けば、彼女が泣いていた。朝露のような光る涙が一筋、頬を伝っていた。そしてそれは止まることを知らず、何度もぽたぽたと流れ落ちて彼女の顔周りで花が咲いていく。
「…っ、はい…」
ぐしぐしと、彼女はその包帯を巻いた手で涙を拭う。
「はいっ…!」
顔を上げた彼女は、真っ直ぐな眼差しでこちらを見た。先ほどまでに、光の消えた目をした彼女とは思えないくらい。エメラルドの海を映したような瞳に、思わずデスハーは吸い込まれそうになった。
____後に、花の騎士と呼ばれる少し泣き虫の女騎士が誕生するのだが、そんな未来を予想できた者など誰一人としていなかったという。
<第一部 完>
それは涙と対になって
悲しみが力となって
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作者名:アユミ | 作成日時:2022年5月2日 22時