麗しき、あなたを描く。(隊長視点) ページ1
｢あの、デスハーさま…｣
｢…何か用か｣
何やら、A殿とデスハー様が話をしている。少し恥ずかしげに、デスハー様に向かって笑うA殿。
何か、手に持っている…？
デスハー様を見つめながらにこにこした顔で、腰の後ろに何かを隠し、何やら辺りをぴょこぴょこと忙しない。あれを見られたくないのか、何なのか。
｢おい、その手に隠し持っているものはなんだ｣
｢えー…その…｣
｢見せたいのか、見せたくないのかどっちなんだ｣
デスハー様の眉毛がぴくりと上がっていた。
｢えへへ…｣
照れくさそうにそう言って、ようやくA殿が差し出したのは。こちらからはあまりよく見えないが…。あれは、何か、紙…？いや、絵か…？
｢なんだこれは｣
デスハー様は、紙を受け取るとそちらをじっと見つめた。あいにく紙に隠れてしまいデスハー様のお顔が分からない。紙に書かれた内容も気になるが、あの紙の向こうでデスハー様がどのようなお顔をされているのか。そちらの方が、興味をそそられる。
｢俺はこんな顔をしているのか｣
紙からデスハー様の顔が上がった。その表情は、いたっていつものデスハー様だ。我らが冥府の王、デスハー王の顔だ。
｢こんな…顔をした覚えはないが…｣
A殿は、何やら嬉しそうにしている。
｢お前にはそう、映っているのか｣
一体あの紙に何があるというのだろう。話の内容から察するに、やはりA殿は…。
｢はァ。ヘラヘラしているのはあの弟だけで充分だっ。それに 、絵を描かれるなど私は好かん｣
やっぱり…。デスハー様の、絵を描いたのか。お顔をコンプレックスに思われているデスハー様の絵を描くなど…。
なんて肝の座った人だ。
｢…そう、ですか｣
少ししゅんとした表情のA殿に、デスハー様の眉毛が少しだけ下がる。言いすぎた、と思ったのだろうか。全く大した人だ。
あの方にこんな顔をさせるなんて。恐らくそれができるのはA殿だけであろう。
｢…生憎私は自分の顔をあまり見たくはない｣
デスハー様はそう言った。するとA殿は優しく笑って｢そうですか？｣と返す。
｢私は、デスハー様の笑ったお顔が好きです｣
……あぁ本当に。デスハー様が、敵わないわけだ。
また紙でデスハー様のお顔が隠れてしまってその表情が見えない。一体、あの向こうでどんなお顔をされているのだろうか。
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作者名：アユミ | 作成日時：2022年5月2日 22時
