少年の望み ページ7
他愛もないそんな会話を交えた後、クロロはぽつりと言った。
「少なくともオレは、大人になっているんだね」
その表情は何を思っているのかは分からない。でも、そうか。こんなところに子供一人でいたら、さっきみたいに明日には死んでしまったっておかしくないかも知れない。
「ねえ。私もね、あなたの過去のことは全然よく知らないんだ。けど、この街にいたってことは知っていたけれど…。クロロは、ここを出ようとは思わないの?」
「考えたこともあるけれど…。でも、仲間もいるし。アイツら連れて、ここを出るにはちょっと危ないと思って。でも、そうだな…。ここ以外の、外の世界を知りたい」
あぁ、そうか。仲間がいるのか。あれ、それって、幻影旅団の皆のことなのかな。今のクロロは見たところ、歳は10とか、小学生の男の子くらいに見える。そんなに昔から、仲の良かったメンバーなのかな。
「あんたは、ここ以外の街や、世界を知っているんだろ?」
「え、そ、そうだねぇ…」
どちらかと言うと、本当に別世界から来てしまったから、正直こっち側のことはよく知らない。確かに旅団の彼らはよく拠点を変えてはいたけれど、どこも似たような街並みだった。あちこちをちゃんと旅したことはないし、第一、アジトの外に出たこともあまりない。
「…でもクロロは、他にも行きたいところがあるのね」
「あぁ。知りたいんだ。オレは、知らないことばかりだからさ。自分のことも、この広い世界のことも。他にどんな街が、空が、人が…。この世界は知らないことばかりだ。だから、沢山のことを知りたい」
この歳の子ってそうだよな。色んなものに興味を示して。
「それに、欲しいものもある。あいつらにいい服を買ってやりたいし、美味いもんだってもっと食わせてやりたい。この辺で食えるものなんて、そこらのゴミ箱を漁ったり、協会へ行って配給を少しもらえるくらいだ。それに、住む場所も欲しい」
「そっか…。知りたいことも、欲しいものもたくさんあるのね」
「…特別なものが欲しいわけじゃないが…あいつらに不自由ない生活くらいはさせてやりたいんだ。オレは別になくてもいい。けど、知識が欲しい。この先、あいつらとちゃんと生きていける知識とか、色々」
知識…。そうよね。本当なら、その歳くらいなら学校に行って沢山のことを学んでいるはずなのに。そういえば、クロロは本が好きだったなぁ。
「ねえ。本、とかは読まないの?」
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作者名:アユミ | 作成日時:2021年8月18日 19時