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「おい、目ェ覚ましたぞ」
 ぼやけた視界。見知らぬ天井。少しずつ、色彩を取り戻していく。そしてこちらを覗く、茹で卵のような…。

「ハゲ……」
「うっせえ!」
「事実です」
 お前もうるせえよ!、なんて聞こえて、ようやくぼけた視界がはっきりと浮かび上がってきた。
 この人は……。

「サイタマ、さん……?」
「助けてやったのに結構失礼なヤツだな、お前……」
 ゆっくりと上体を起こす。まだ頭がグワッ、としている。目を擦って辺りを見回す。そしてもう一人、そこに男の人を私は見つけた。

 イケメンだぁ…、なんてぼんやり思った。

「コイツ今絶対ジェノスのこと、イケメンって思ったな」
「じぇのす…?」
「サイボーグのジェノス。知らないのか? おい珍しいなジェノス、今じゃS級で引っ張りだこのお前を知らない奴がいるなんて」
「……あの、ところでここ」
「オレん家」
 あぁ、オレん家……。オレん家…。
「って、な!?」
「急に倒れたのあんた覚えてるか?」
 サイタマさんの台詞に、記憶を探りながら私は頷く。でもこの、隣にいるイケメンの記憶がないんだけれど…。
「勝手に家に入れ込んですまん。でも、医者を呼べる状況でもなかったし、一応応急措置としてだ。このご時世、気絶した女を放っておくわけにもいかないし」
 ……サイタマさんの説明に、とりあえず自分はまた彼に助けられたのだ、と理解した。
「ご迷惑、おかけしてすみません……」
「あ、いや別にそんな謝られることじゃないし。っつーか良くなったら送ってくわ」
 お礼を言いかけて、私はハッとした。

 送ってもらうとは、一体何処へ…?

「あ、あのサイタマさん!」
「ん。どした」
 そんなこと……もう、できないじゃない。だって私、家への帰り方だって分からないし、ここがどこだか全く分からない!
 怪獣だか宇宙人だか知らないけど、あんな化け物映画でしか見たことないわっ。

 どうしたら、いいんだろう…。

「わた、し……」

 もうわからないよ…。怖い……。何もかも、知らない世界で、怖い化け物がいて…。

「家が、どこだか、わかりま……せん……」
「っっな、家が!?どこだか分からないって、えぇー……」
「……本当か?大方、家出をしてきたけれど、保護者に連絡されるのが怖くて嘘をついているのでは」
「え、そうなの?」
 イケメンさんが少しキツイことを言ってきたが、私は首を振った。

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作者名:アユミ | 作成日時:2019年5月9日 2時

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