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だめ……。

「だ…」

 だめ…! 子供は、子供は! どうにか、どうにかしてあげないと! アイツ、あっちへ行っちゃう! あぁ、なんで…
「なんで…」
 なんでカラダ、動かないの!?
怖くて、怖くて怖くて。腰が抜けて立てない。でも…!

 あの子が……

「っく…!」

 黒い鎌のそいつは私から離れどんどん男の子に近づく。
「動いて!」
 バシン、と私は地面にぺたりとついた両脚に、そばにあった大きめの石ころを打ち付ける。ぐわん、と重い痛みが太腿に走るが、どうやら震えを抑えられたみたい。

「ま、って……!」
「あぁ?」

 走り出し、私はやっと男の子の傍まで来れた。ぎゅ、とこちらが逆に縋るように男の子を抱きしめる。
「おねえ……ちゃ?」
「お、おねえちゃん…が……まも、てあげる……から」

 するとソイツは、不気味な笑みを浮かべ、
「ッハッハッハ!見ず知らずのガキを助けに来たか!」
 が、とソイツは気味の悪い笑顔を浮かべる。

「結局二人とも、犬死にだ」

 あばよ、とソイツは言った。

 あぁ、私の人生、終わってしまった。

 目をぎゅ、と瞑る。けれど、不思議と痛みは感じず、代わりに微かな風の音と、パン、と風船が破裂したような音が鳴った。

 きっと、一瞬で死んでしまったから苦しくもないのね。そう思って、目を開ける。

 黄色と、白いマントがまず最初に、見えたものだった。

「よかったな、ねえちゃんが守ってくれて」

 その人は一言、そう言った。いや……誰? それより、なに? 何の格好? コスプレ? なぜ頭だけ何もないの? いや、それより……

「あのバケモノ……」
「もういねえよ」
 その人は物凄いシンプルな顔でそう答えた。な、どういうこと? あのバケモノは一体どこへ? まさか……

 まさかこのツルツル頭さんが……

「誰がハゲだって?」
「え、あいや」
 いや、ハゲとまでは言ってな…。いや今心読まれた!?

「ハゲマントだ」
 腕の中の男の子が、そう言った。
「ハゲマント?」
「いや誰がハゲマントだこのヤロウ! オレはサイタマ。ヒーローのサイタマ!!」
 びし、と親指で自分を指差す自称ヒーローサイタマさん。ヒーローって……この人本気で言ってるのかな。
「それより、お前」
「はい?」
「あんたじゃねえよ。弟に言ってんだ」
 弟?

「おいお前。そこのボウズ。ちゃんとおねえちゃんに礼を言えよな。命賭けて、今守ってくれたんだぞ」
 うん、と小さく男の子は頷く。
「おう」

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作者名:アユミ | 作成日時:2019年5月9日 2時

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