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｢ヒーローとして、このままコイツをほおっておくのも寝覚めが悪いしな｣
｢ありがとうございます！！｣
｢その代わり、帰る方法はちゃんと見つけるんだぞ。オレも手伝うから｣
｢はい！｣
この世界における、ヒーローというものを私はよく知らない。でも今目の前にいるこの人は、紛れもないヒーローだ、ということだけは分かった。
｢人がいい先生に、あまり漬け込むなよ。妙な真似をしたらこの家からつまみ出すからな｣
｢はいっ。あの、私家事でも雑用でなんでもこなしますので！｣
｢おー、助かるわ｣
このまま私はどうなるのかは分からない。ただ、行く宛てもない私をこの二人が助けてくれたことは事実で。その恩返しだけはきちんとしていこうと固く決意した。
早く帰る方法を見つけて、この世界を抜け出さないと。何度も頭を下げた私に、サイタマさんは言った。
｢とりあえず、メシ行かない？｣
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
｢わあ、ラーメン屋さん！｣
飯にしようぜ、と彼女を連れて来たのはよく来るラーメン屋だった。そういえば、考え無しに連れてきちまったな…。あまり女子をこういうところに連れて来るのはいかがなものだろうか、と今更になって後悔する。
しかし、ソイツはいたって楽しそうで呑気なものだな、と逆にこちらが拍子抜けするほどだった。一応知らん世界に来てしまった、というのに観光に来た学生のようなはしゃぎ方をしていた。
A、と名乗ったソイツは、ラーメンを頬張りながらとりあえず互いに身の上話をした。歳は22歳で仕事は事務。意外と年齢が近いことにオレは驚いた。あとは家族構成や、ここに来るまでの経緯、困ったり笑ったり、くるくると表情を変えながらAは話し続けた。
知らん世界に来てしまったというのに、随分と楽しそうな女だ、とオレは思った。
「あ、あの…」
ふいにAの会話も途切れ、視線はジェノスへと飛ぶ。
「…なんだ」
バツが悪そうに視線を泳がせたAは、オレへとそれを向けた。
「この世界は、私のいる世界とは、違うようで…。その、怪獣みたいなアレについても、説明いただけますか…？」
「あ、あぁ。そうだなー」
ジェノスへ視線が飛んだのは、気のせいだったか？
オレは彼女の質問に頷き、何から話したらいいだろうかと頭を巡らせる。
「いつからこんな状況かは知らんが…。とりあえず、この地球には、怪人ってやつらが襲ってくるんだ」
「何者なんですか、彼らは」
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作者名：アユミ | 作成日時：2019年5月9日 2時
