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「おじゃまします……」

 また、もう一度この部屋に上がることになるなんて。二人の男性に続き、私はサイタマさんの部屋の玄関へと足を踏み入れた。そういえば、独り暮らしの男の人の家に上がるのは、初めてだった。

 よく考えたら、この状況もなかなかない状況である。大の男の人二人に、私一人。しかもここは、サイタマさんのお家な訳で。

「…ぼーっとしてるけど起きてるか? また気絶したりするなよな。二度あることは三度あるっていうからな」
 サイタマさんの声に我に返る。ちょこん、とお二人の前に正座して、なんだかこれから両親にお説教を受ける小さな子供になった気分。

「異世界とか、なんとか……にわかには、信じがたい話だな。けど、オマエが嘘ついてるようにも見えねーし」
「……このまま、どうするつもりだ。仮に、本当にお前が別の世界から来たとして、どうやってい生きていくと考えてる?」
「ジェノスお前直球だな…しかし…それを今聞いたところで、答えなんてでないでしょ。知らない世界に放り込まれて、成す術なんてあるはずがない。要するに、家出どころか、コイツには帰る家もないわけだ。だって、元の世界へ帰る方法だって分からないしな」

 うん、とサイタマさんはひとり頷く。

 サイタマさんは、答えなんて出るはずがないと言っているけれど、もう出すべき答えはたった一つしかない気がする。

 図々しいのは分かっている。でも、この人たち以外に、頼れる人なんていないから。

 むしろこの優しいサイタマさんに言わせることの方がもっと卑怯な気がする。

多分、サイタマさん、私があまりにも困っていたら、言うつもりなのだろう。ここにいればいい、と。

それは、少しだけずるい気がして。この人に、それを言わせてはダメだと思った。

「帰る方法が、見つかるまで……ここに、置いていただけませんか」

 正座をしていて正解だった。
これまでの人生で、こんなに人に頭を下げたことはあっただろうか。

「行く宛なんて、どこにも、ないんです……」

「お前が困っているのは分かる。だが先生にこれ以上甘えるのは…」
「うん、いいよ」

ジェノスさんの言葉に被さるようにして出たサイタマさんの台詞。その顔は、至って普通で。

「知らない世界で、行くところなんてあるわけないもんな。困ってるヤツを助けるのも、ヒーローの役目だし」
「サイタマさん…」
「先生、よろしいんですか」


 

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作者名:アユミ | 作成日時:2019年5月9日 2時

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