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ジェノスはさっきと違ってどこか晴れた顔をしていた。
「お前でなくとも、そうしていた。ヒーローだからな」
こいつをうちに拾ってから色々と一悶着あったが、どうやら二人の中では解決しているらしかった。
あの時、ジェノスを追っかけて女が飛び出していった時、オレもすぐに後を追っていった。別の世界から来た、なんてことが事実でなくとも、このまま放っておいてはいけないような気がした。しかし、公園に辿り着いたところで、オレの出番は必要なかったようだった。
そりゃそうだ。なんたって、S級ヒーロージェノスさんのお出ましなんだから。ザコ怪人をやるのに時間は必要ない。
「先生……」
オレに気付いたジェノスは、濡れた髪でこちらを見る。女を両腕で抱え、呟いた。
「今日は、第三土曜日です……」
「あ!そうじゃん!スーパーの特売!もう時間なんじゃねーの!?」
「オレがいきます」
「え、ちょ?」
気を失った女をオレに押し付け、ジェノスは公園を後にする。
「ちょっと!お前が最後まで責任持って面倒見ろって!」
「拾ってきたのは先生です!」
「な、責任転嫁かー!?」
『ならなぜ、オレの家族は死ななければならなかった!?』
あいつにだって、オレの知らない部分はまだいくらでもあるはずだ。ジェノスの過去のことは、詳しいわけではない。けど、それを知ろうとも思わない。だって勝手に弟子になってきただけだし。でも、鉄の無表情と言われたあいつにだって、感情を露にすることがあると分かり、オレはなんだか少し嬉しかった。
「サイボーグだろうが、所詮は人の子だな……」
オレはジェノスの復讐に興味はないし、それを手伝う気もないし、止めようとも思わない。でもいつかそんな時が来た時、オレはジェノスの師として、どうふるまえばいいんだろうか。
「参ったな……やっぱり弟子になんてするんじゃなかったかも」
正義って難しいな。オレはあまり賢くないから、そういった思考は苦手だ。それにオレはただ、趣味でヒーロー活動しているだけだし。
「ま、ジェノスはいいヤツだしな!買い出しも行ってくれるし」
何より、アイツに救われた人間は沢山いる。
この女だって、そのうちの一人だ。
「っつーか、こいつ、どうしよう……」
この時のオレは……。いや、ジェノスも。まだ知る由もなかった。ただの記憶喪失の女だったこいつが、いずれヒーロー協会を、世界を揺るがすほどの事件を起こすことになるとは。
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作者名:アユミ | 作成日時:2019年5月9日 2時