検索窓
今日:12 hit、昨日:7 hit、合計:6,544 hit

14 ページ15

ジェノスはさっきと違ってどこか晴れた顔をしていた。

「お前でなくとも、そうしていた。ヒーローだからな」

 こいつをうちに拾ってから色々と一悶着あったが、どうやら二人の中では解決しているらしかった。

 あの時、ジェノスを追っかけて女が飛び出していった時、オレもすぐに後を追っていった。別の世界から来た、なんてことが事実でなくとも、このまま放っておいてはいけないような気がした。しかし、公園に辿り着いたところで、オレの出番は必要なかったようだった。

 そりゃそうだ。なんたって、S級ヒーロージェノスさんのお出ましなんだから。ザコ怪人をやるのに時間は必要ない。

「先生……」
 オレに気付いたジェノスは、濡れた髪でこちらを見る。女を両腕で抱え、呟いた。
「今日は、第三土曜日です……」
「あ!そうじゃん!スーパーの特売!もう時間なんじゃねーの!?」
「オレがいきます」
「え、ちょ?」
 気を失った女をオレに押し付け、ジェノスは公園を後にする。
「ちょっと!お前が最後まで責任持って面倒見ろって!」
「拾ってきたのは先生です!」
「な、責任転嫁かー!?」

『ならなぜ、オレの家族は死ななければならなかった!?』

 あいつにだって、オレの知らない部分はまだいくらでもあるはずだ。ジェノスの過去のことは、詳しいわけではない。けど、それを知ろうとも思わない。だって勝手に弟子になってきただけだし。でも、鉄の無表情と言われたあいつにだって、感情を露にすることがあると分かり、オレはなんだか少し嬉しかった。

「サイボーグだろうが、所詮は人の子だな……」

 オレはジェノスの復讐に興味はないし、それを手伝う気もないし、止めようとも思わない。でもいつかそんな時が来た時、オレはジェノスの師として、どうふるまえばいいんだろうか。

「参ったな……やっぱり弟子になんてするんじゃなかったかも」

 正義って難しいな。オレはあまり賢くないから、そういった思考は苦手だ。それにオレはただ、趣味でヒーロー活動しているだけだし。

「ま、ジェノスはいいヤツだしな!買い出しも行ってくれるし」

 何より、アイツに救われた人間は沢山いる。

 この女だって、そのうちの一人だ。

「っつーか、こいつ、どうしよう……」

 この時のオレは……。いや、ジェノスも。まだ知る由もなかった。ただの記憶喪失の女だったこいつが、いずれヒーロー協会を、世界を揺るがすほどの事件を起こすことになるとは。

15→←13



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.3/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
14人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アユミ | 作成日時:2019年5月9日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。