検索窓
今日:21 hit、昨日:7 hit、合計:6,553 hit

1 ページ2

日常が、突然非日常に変わるということがあるらしい。嫌でもこんな現実を見せつけられたら、そう確信せざるを得ない。でも別に、昨日が飲み会だったわけでも合コンでもなく、この身体にアルコールというものは一滴も入っていないのにな…。

「カイジンだぁ!!」
「ぎゃああああぁ」

 耳を劈くような破壊音、崩れていく家。逃げ惑う人々。ドラマか何かの撮影かと思えば違う。だって…だって実際、目の前で人が殺された。

 見たことの無い生き物が、大きな何かを振り回し、まるで漫画のように、スパンっと。つい数秒前まで声を発していた人間が。今目の前で生きていた人間が。死んでしまった。ゴロン、と転がった頭と目が合った時、数秒後に自分が同じ姿になるのを想像し、私は胃の中にあったものを全て吐き出した。

 大量の血。叫び声。匂いも音も。夢でもなく、お酒が作り出した幻でもなく、現実という二文字の無慈悲。

「どうした?気分でも悪いのかァ?」

 吐いている途中、声が耳に届くよりも先に、全身に悪寒が走った。この、転がった頭の男性と、同じ目に遭う、と私のささやかな脳みそは判断した。

「っへっへっへ……。直に楽になれるぜ。そいつと同じ所へ、このオレサマが送ってやらァ」

 や…。いやだ。死ぬ。やられる。殺される。死ぬ。死んじゃう!!いやだ!

 声をあげたい。助けて、ここにいる。誰か……。叫びたい。なのに、なのに声が出ない。どうしてこうなった? ここは一体どこ? 普通の住宅街? なはずなのに、私はこんな街来たことない。コンビニに入って、トイレを借りて、ちょっとお菓子買ってコンビニ出ただけなのに。

 そこは知らない街だった。

「や……。め…」
「かわいそうになァア。震えちゃってるねェ。でも、もうすぐ……もうすぐさ。幸せなところに行けるんだよ。楽しくて、素晴らしいところへ……」
 大きな鎌のような真っ黒い手が目の前にくる。宇宙人? 怪獣? あぁ、もう。死ぬから、どうでもいいや…。もう、だめだ……

「うわああああん!!おかーさん!おとうさあああん!!」
 な……子供?
視線を投げれば、5,6歳くらいの男の子がソイツの少し後ろで泣いていた。
「おかあさん!おとうさん!うわああん!」
「ッチ……。るせえなぁ」

 大きな声で泣き上げる男の子。こんな、小さい子までが…。
「ガキはうるせえから嫌いだ」

 そう言うと、目の前の黒い鎌が遠ざかっていく。

 ま…さか……。
 

2→←*Z市へ行く心構え



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.3/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
14人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アユミ | 作成日時:2019年5月9日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。