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たどり着いたのは閑散とした駐車場。
バイクを止めて、ヘルメットを脱ぐ。
吹き抜けた風に小さく肩を竦めた時。
鼻孔をくすぐったのは、線香の匂いだった。
「……那智」
周りに人影はなく、静まり返った墓地。
綺麗に磨かれた墓石の前に佇む私は、ぼんやりとその場所を見つめていた。
正直、彼がここに居る実感が沸かない。
まだ、彼がひょっこりと現れるような気がして。
まだ、彼があの大雑把な笑顔を見せてくれるような気がして。
「そう言えば、一回さ……、二人で行ったよね。海」
昔、那智に連れて行かれたのは、真夜中の海だった。真っ暗の。
黒に浮かんだまん丸の月が、とても綺麗だった事を覚えている。
「あんたが色々上手くいってない時だったから、臣が慌てて迎えに来たの。覚えてる? あの慌てようは笑えたよね。コイツが死ぬわけないじゃんって、私、大笑いしたの……。そう、あんたが死ぬわけ、ないって……」
まるで昨日の事のように、あの時の穏やかな波の音が耳内に響く。
こびりついて離れない、海の静けさと、那智の声。
「けど、死んじゃった……」
私がその言葉を口にするまで、随分と長い時間が必要だった。
やっと、理解して、飲み込んで、見据える事が出来た現実。
「あの空の上に行けば、あんたに会えるんだよね」
* ページ22
たどり着いたのは閑散とした駐車場。
バイクを止めて、ヘルメットを脱ぐ。
吹き抜けた風に小さく肩を竦めた時。
鼻孔をくすぐったのは、線香の匂いだった。
「……那智」
周りに人影はなく、静まり返った墓地。
綺麗に磨かれた墓石の前に佇む私は、ぼんやりとその場所を見つめていた。
正直、彼がここに居る実感が沸かない。
まだ、彼がひょっこりと現れるような気がして。
まだ、彼があの大雑把な笑顔を見せてくれるような気がして。
「そう言えば、一回さ……、二人で行ったよね。海」
昔、那智に連れて行かれたのは、真夜中の海だった。真っ暗の。
黒に浮かんだまん丸の月が、とても綺麗だった事を覚えている。
「あんたが色々上手くいってない時だったから、臣が慌てて迎えに来たの。覚えてる? あの慌てようは笑えたよね。コイツが死ぬわけないじゃんって、私、大笑いしたの……。そう、あんたが死ぬわけ、ないって……」
まるで昨日の事のように、あの時の穏やかな波の音が耳内に響く。
こびりついて離れない、海の静けさと、那智の声。
「けど、死んじゃった……」
私がその言葉を口にするまで、随分と長い時間が必要だった。
やっと、理解して、飲み込んで、見据える事が出来た現実。
「あの空の上に行けば、あんたに会えるんだよね」
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ちーずたると(プロフ) - 最後の台詞、テメェらがメテェらになっちゃってます…!折角良い作品なのに。更新お疲れ様でした。 (2018年1月20日 1時) (レス) id: 16ae0bdd23 (このIDを非表示/違反報告)
黒ちん(プロフ) - コメ失礼します!めちゃくちゃドキドキしました!十座大好きなので本当に嬉しかったです!続き楽しみにしてますね! (2018年1月14日 14時) (レス) id: 339ef6e82f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まるち | 作成日時:2018年1月7日 1時