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私は、那智の笑顔が好きだった。
大雑把と言うか、なんと言うか。
何もかもを笑い飛ばしてしまう、彼の雑な笑顔が好きだった。
けれど今、何故か、そんな大好きだった笑顔が上手く思い出せずに居る。
那智の事を考えると、いつも記憶とは違う情景が溢れて来るのだ。
胃がもたれそうな程の甘いものを目の前にした時だけ、彼は笑う。
小さな小さな蕾が、人知れず綻ぶような。そんな些細な笑み。
――違う。
私は首を振った。
――彼は、那智じゃない。
「あの子は……、」
ふと我に返った時。
店の外は既に暗くなっていた。
今日一日、何をしても心ここに在らずで。
接客すらも、上手くこなせていたかどうか……。
「はあ……。何やってんだか、」
大きなため息を零しながら、私は閉店の看板を掛けるために外へ出た。
店の外には既に人通りがなく、静かで、暗い。
このまま暗闇を進んでいけば、那智に会えるのではないだろうか。
唐突に湧き上がった予感。
暗闇へ踏み出す事に迷いは無かった。
会いたいよ、会いたい……。
那智。なんで……、会いに来てくれないの。ねぇ……。
「Aさん。どこ行くんっすか」
ふらりと歩き出した私の腕を掴んだ大きな掌。
「那、……っ」
「Aさん」
振り返った先に居たのは、困ったように眉を下げる十座だった。
「店。閉店の準備してたんじゃないんっすか」
「……あ、ああ。そうだった」
私は無理やり笑みを張り付けて、地面に転がっていた看板を扉に掛ける。
「ってか、十座。どうしたの、こんな時間に」
いつもの調子を装うも、彼の顔を見られない。
どうしても、彼と重なる影が拭いきれなくて。
胸に広がっていた寂しさが、酷い動揺を連れて来るのだ。
なにも、こんな日に来なくても良いだろう、と――
「……今日、那智って人の命日だって聞いた」
偽形 ページ13
私は、那智の笑顔が好きだった。
大雑把と言うか、なんと言うか。
何もかもを笑い飛ばしてしまう、彼の雑な笑顔が好きだった。
けれど今、何故か、そんな大好きだった笑顔が上手く思い出せずに居る。
那智の事を考えると、いつも記憶とは違う情景が溢れて来るのだ。
胃がもたれそうな程の甘いものを目の前にした時だけ、彼は笑う。
小さな小さな蕾が、人知れず綻ぶような。そんな些細な笑み。
――違う。
私は首を振った。
――彼は、那智じゃない。
「あの子は……、」
ふと我に返った時。
店の外は既に暗くなっていた。
今日一日、何をしても心ここに在らずで。
接客すらも、上手くこなせていたかどうか……。
「はあ……。何やってんだか、」
大きなため息を零しながら、私は閉店の看板を掛けるために外へ出た。
店の外には既に人通りがなく、静かで、暗い。
このまま暗闇を進んでいけば、那智に会えるのではないだろうか。
唐突に湧き上がった予感。
暗闇へ踏み出す事に迷いは無かった。
会いたいよ、会いたい……。
那智。なんで……、会いに来てくれないの。ねぇ……。
「Aさん。どこ行くんっすか」
ふらりと歩き出した私の腕を掴んだ大きな掌。
「那、……っ」
「Aさん」
振り返った先に居たのは、困ったように眉を下げる十座だった。
「店。閉店の準備してたんじゃないんっすか」
「……あ、ああ。そうだった」
私は無理やり笑みを張り付けて、地面に転がっていた看板を扉に掛ける。
「ってか、十座。どうしたの、こんな時間に」
いつもの調子を装うも、彼の顔を見られない。
どうしても、彼と重なる影が拭いきれなくて。
胸に広がっていた寂しさが、酷い動揺を連れて来るのだ。
なにも、こんな日に来なくても良いだろう、と――
「……今日、那智って人の命日だって聞いた」
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ちーずたると(プロフ) - 最後の台詞、テメェらがメテェらになっちゃってます…！折角良い作品なのに。更新お疲れ様でした。 (2018年1月20日 1時) (
レス) id: 16ae0bdd23 (このIDを非表示/違反報告)
黒ちん(プロフ) - コメ失礼します！めちゃくちゃドキドキしました！十座大好きなので本当に嬉しかったです！続き楽しみにしてますね！ (2018年1月14日 14時) (レス) id: 339ef6e82f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるち | 作成日時：2018年1月7日 1時
