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Side Ymmt
「…え、あれ」
「あ、実は」
状況が全く読めない僕に、みやまえさんはちょっとだけ顔をこちらに寄せて声を潜めた。いつものかわいらしい笑顔とは違う、まるでいたずらっ子のような無邪気な笑顔。
「これ、代わりにためておきました」
彼女が見せてくれたのは、全部埋まったスタンプカード。右上には小さく「山本さん」と書かれている。
「これ、初回でお話しなかったんですけど、全部ためるとドリンク一杯引き換えてるんです」
「山本さん、よく来てくださるのにもったいないなと思って」
「だから今日はこれで引き換えますね」
「あ、ありがとうございます。ていうか」
嬉しそうに話してくれる彼女。
ほんとに覚えててくれたんだなって嬉しいんだけど。
「…僕のこと知ってるんですか?」
カードに小さく書かれた名前とそれからさっきしれっと呼んだよね…?彼女はというと、あのおちゃめな笑顔が一瞬で固まり、目を逸らしてしまう。
「…すみません、あの、ファンでして」
なぜか不安げに僕の顔を伺うみやまえさん。
僕はと言えば、彼女が僕を知ってくれているという事実が嬉しくて、なんでそんな不安そうなのかもわからない。
「嬉しいです!ありがとうございます!」
「え、あ、いいんですか…?」
「…なんで?」
「…私がファンでもまた来てくれますか…?」
「…もちろんです!」
不安になってくれているのが、きっと僕かQKのファンだからって言うのもあるだろうけど、でも彼女に来てほしいなんて言われちゃうと勘違いしそうになるし。…僕、もしかしてだいぶ惹かれてるかもしれない。
僕がもちろんと答えると、彼女はまたぱっと顔を輝かせた。
「よかったぁ…、またお待ちしてます」
「絶対また来ます。…250円でしたっけ」
「あ、そうです」
二人してすっかり忘れていたお会計のことを思い出し、顔を見合わせ笑う。…少し、仲良くなれた気がするかも。
「はい、ちょうどお預かりします。…スタンプカード、どうしますか?」
これからも来るなら作ったほうがいいんだろうけど。
「僕、財布の中、よくぐちゃぐちゃにしちゃうんです」
「だから、またみやまえさんが貯めておいてくれますか?」
まあなんて迷惑なお願いなんだとはおもうんだけど、これでまた彼女と話せるなら、僕が来ることを彼女が待っててくれるなら。
「わかりました、また待ってます」
にっこり笑った彼女。
…ああ僕、好きかもしれない。
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黄色い恐竜(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます!私も書くことが自粛期間中の楽しみだったので、そう言っていただけて嬉しいです…!次回もよければぜひよろしくお願いいたします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - ぺりさん» コメントありがとうございます!私も大好きな二人をそう言っていただけて嬉しいです…次回はまた雰囲気が変わるかと思いますが、よければぜひよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - 孤黒さん» コメントありがとうございます!日常的な幸せって素敵ですよね…そう言っていただけて本当にうれしいです!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
早瀬 - 完結おめでとうございます!コロナで外に出れない憂鬱なこの日々の楽しみがこのお話でした!とってもとっても素敵でした…!!山本さんを幸せにしてくれてありがとうございます笑これからも素敵な物語を楽しみにしています! (2020年6月14日 23時) (レス) id: 0963beb20e (このIDを非表示/違反報告)
ぺり(プロフ) - はじめまして!完結おめでとうございます!陰ながらずっと更新を楽しみにしておりました。山本さんが報われてよかったし、本当に好きな2人でした。次回も楽しみにしております! (2020年6月14日 22時) (レス) id: aef7fed343 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄色い恐竜 | 作成日時:2020年5月21日 21時