【QK】煙草と珈琲と君【ymmt】

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Side Ymmt


じゃあ僕明日早く帰るからね、Aちゃんも残業しちゃだめだよ、と念を押すと、Aちゃんはわかってるって、とくすくす笑う。特別な高揚感はなくても、僕たちは幸せだった。


「ね、この距離で話すのももうないのかな」

『別にいつでもできるでしょ』

「えー、会いたいじゃん」

『なに、これ続けたいのかやなのかどっちなの』

「どっちも」


Aちゃんに楽しそうだね、と言われて、ああ僕楽しいんだなって実感する。…楽しいというか、浮かれているというほうが正しいかも。
いつの間にか新しい煙草をまた取り出して、Aちゃんは煙を吐いている。


『祥彰さ、明日何食べたい？』

「…え」

『え、食べてかない？コーヒーだけ飲んで帰る？』

「…たべるっ！Aちゃんのごはんとか絶対美味しいじゃん食べる！」

『でしょ？何食べたいの』


思わず少しだけ声が大きくなる。
Aちゃんは僕の言葉にまたけたけた笑って、少し離れたところから僕をじっと見つめていた。その表情がとっても優しい。


「んー、…オムライス！」

『…そんなんでいいの？』

「え、簡単なの？」

『とても楽』

「あれがいい、ぱかってひらくやつ」

『あ、レベル上げてきた』

「だめ？」

『いいよ。…仕事以外の誰かのための料理って、久しぶり』


少しだけ嬉しさがにじんだAちゃんの声に、なんだか僕は泣きそうだった。…Aちゃんの日常に、少しずつ僕が入れたらいいな。


「…楽しみにしてるからね」

『ふふ、任せて。がんばっちゃう』


先程吸いだしたばかりだろうそれを灰皿に押し付けたAちゃんは寝よっか、と伸びをした。つられるように僕も欠伸をする。


「また明日ね」

『うん、また明日』


大好きだよ、なんて言わなくても、分かってた。
わかってることが嬉しくて、また頬が緩んでしまう。

いつも通り電話を切って、Aちゃんが部屋に入るまで見送って、僕も部屋に戻る。いつも通り僕から「おやすみ」って一言送ってベッドへ潜り込んだ。



「山本さ」

「はい？」


次の日、オフィスで唐突に伊沢さんに名前を呼ばれた。
じっとこちらを見つめてきたと思えば、ふっと笑って小さく呟く。


「わかりやすいよね」

「え？」

「今度話聞かしてもらお」


一人で楽しそうな伊沢さん。…僕そんなわかりやすいかな。まあ、だって、あと少しの撮影頑張ればAちゃんに会えるんだもん。
そりゃ嬉しいでしょ？

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