【QK】あれからの２人【sgi】

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式典の間、電源を切っていた端末を起動させてホーム画面を開いた瞬間。
その画面はもう見慣れた着信を示すそれに切り替わった。
…なんていいタイミングなんだろう。まるで計ったかのよう。
だいぶ騒がしい周りから少し距離をとろうと人をかき分けながら応答ボタンを押す。


「もしもし、どしたの」

「あ、A終わった？」

「一応、終わったけど」

「先生と話したり友達と話したりあるでしょ、終わったら教えて」

「え、待ってどういうこと？」

「いいからいいから、大学の卒業式よ、ちゃんとお話しておいで。あとでね」


そして一方的に切られる電話。その真意が何か考える間もなく、
後ろから呼ばれる自分の名前に意識は持っていかれ、そのまま集まっていたゼミ生に合流する。
パーティーに行かないからと言って大学に思い入れがないわけではない。
今は彼の言う通り、この瞬間に集中した方がよさそう。


一人、また一人、この後パーティーが、であったりほかにも会いたい人が、と離れていく。
私も最後にもう一度お世話になった先生に挨拶をして、ゆっくり歩きだした。


「…もしもし」

「もしもし、終わった？」

「うん、終わったよ、ちゃんと話してきた」

「えらい。そんじゃ大学出て駅の方少しいったとこにコンビニあるでしょ。そこで待ってて」

「…待ってて？」

「うん、んじゃあとで」


また一方的に切られる通話。
…今日の駿貴さん変だし、しかも、待っててってどういうこと。

それはつまり、そういうことで。



「…なんでいるの」

「迎えに」

「なんで車なの」

「それでずっと歩くの大変でしょ」

「なんでスーツなの」

「そりゃ、彼女が卒業式だからね」

「なんで、」

「今日くらいかっこつけてもいいでしょ、彼氏なんだから」


ただでさえかっこいいのに、スーツを着てしっかり決めた彼はいつもの数倍かっこいい。
まさか会えると思わなくて、そしてこんなことをしてくれると思わなくて何も言えなくなる。


「とってもきれい、似合ってるよ」

「…ありがと」


…もう泣いてもいい？見てもらえたから満足だよ。私しあわせで泣いちゃうよ。


「あ〜〜！だめ、泣かないの！」

「ええ、なんで」

「もうちょっと耐えて。はい、乗って」


付き合ってもうすぐ半年、駿貴さんは私の表情の変化にとても敏感になった。
すぐにばれて泣くなと言われ、そして車のドアを開けてくれる。
優しく笑ってくれる彼は、やっぱりとってもかっこいい。

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