【QK】あれからの２人【sgi】

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Side You


「…帰りたくない」

「んー、わかる」


駅のホームで冷たい風に吹かれながら、駿貴さんの手を握っている。
私の終電がくるまであと7分。
こぼしてしまった本音に、駿貴さんは大真面目に返してくれた。


「連れて帰ってよー」

「まじで、そんな、付き合った日にそんなことしません」

「今日が2カ月記念日だった説ない？」

「ありそうだけどないです、お兄さんはあなたのことを大事にするって決めました」

「けち」

「なに、やっぱり積極的なの？」

「…意味わかんない」

「うそ、わかってるよ」


別にそういうことがしたいわけじゃなくて
…したくないわけでもないけど！そうじゃなくて！
もっともっと一緒に居たいと思っちゃうんだよ。


「…私も欲張りだったな」

「いいじゃん」

「わがままかもよ」

「んー、全部は答えられなかったらごめん」

「基本は叶えてくれるんだ」

「そりゃね」


じゃあ今日だって、と言いかけたところでつないでいた手がさらに握られる。


「ゆっくりたくさん思い出つくろうじゃないの」


俺はもうAのだよ、と優しく笑う駿貴さん。

…そっか、今日じゃなくても会えるもんね。
会いたいって伝えていいんだもんね。

…ほんとに彼女になれたんだな。
さっきまで寂しかったのに、駿貴さんの一言でなんだか幸せなんだから
私はほんとにあなたのことが大好きなんだ。


「いっぱい思い出つくろうね」

「もちろん」

「おでかけしよう」

「いいねぇ」

「買い物とか映画とか」

「あーいいね。俺公園行きたい」

「うわ、いいね。今寒いけど」

「それな。あったかくなったら行こ。キャッチボールしよ」

「じゃあバドミントンもしよ」

「運動会じゃん」

「いいじゃん」

「…いいかも」


電車が来るまでの数分間、こんな会話ばっかり。
あれやりたいこれやりたいって適当にしゃべってるだけだけど
これから少し先の未来には駿貴さんと一緒にいれるんだなぁ。


急にシャッター音がした。
え、と顔を上げると駿貴さんがしたり顔でケータイを構えている。


「俺の彼女」

「…わけわかんない」

「んふふ、かわいい」

「ベタぼれじゃん」

「そうなのよ」


電車がホームに入ってくる。
お互い髪が風に吹かれてすごいことになったけど、
そのまま付き合って最初の写真を撮った。
ね、私たちらしくていいよね。

手が離れて私は電車に乗る。
寂しいけど、寂しくないよ。

これからが楽しみでしょうがないや。


Fin. あの日のその後

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