【QK】諦められないんだからしょうがない【sgi】

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Side Sgi

だいぶ暖かくなった春の風に二人であたる。
そういえば、と昼に川上から聞いた話を思い出した。


「かんちゃんさ、来月からお休みするんでしょ」

「そうなんです。ちょっと家のことで」

「ね、聞いた。大変ね」


3カ月前後が目安というが、やっぱり状況によってはすぐに戻ってこれない可能性もあるという。俺らのわがままが到底言える状況ではないが、彼女がいて成り立っている現状、抜けてしまうのは短期間と言え厳しいだろう。
川上が言うには、彼女は最初は退職を申し出たらしい。それにはかなり驚いた。もしかして、このまま帰ってこないのかもしれない。なんとなくそう思うと、そのまま疑問にしてぶつける。


「…帰ってくるでしょ？」

「帰ってきますよ、…多分」

「なにそれ、帰っておいで」


帰ってくると即答するも、やはり不安なのか小さく付け足された多分、という言葉に思わず笑ってしまう。
最後の言葉に他意はない。メンバーみんな同じ意見だろう。隣の彼女は、少しだけ顔を綻ばせて、そしていたずらっぽく笑う。


「須貝さんいるなら帰ってきます」

「えぇ？いますよ俺はー」


なぜか条件として出された自分の名前にまぬけな声を出す。俺は別にいなくなる予定はない。彼女は満足そうに目を細めた。どうしてこうも素直なんだろうか。
少しの沈黙の後、彼女が口を開く。

「先、戻りますね。
　…隣の席で待ってまーす」

「おうよ、待ってて」


冗談めかして発されたその言葉に乗って返すとまた嬉しそうに笑い、いつも通りのポニーテールを揺らしながら戻って行った。

話は少し変わる。
理科の実験や何かの論文を書く時、まず人は仮説を立てる。そしてその仮説が正しいかどうか検証できる実験や調査を考え、行う。その結果からわかることをまとめて、仮説が正しかったかどうか述べる。まあつまり、諸々の研究の最初はある疑問と仮説から始まるわけ。

さて、話を戻す。
ここ最近、やけに素直すぎる彼女の言動について。

…もしこれが、彼女が俺のことを好きだとしたら？

自惚れている自覚はある。彼女が根っからの妹気質で男が喜ぶようなことを無自覚に言えるのかもしれない。でも、見る限り俺には極端なように思える。

仮に好きだとしよう。
…俺はそれに今は応えることができない。
彼女がいることはかんちゃんも知っているはずだ。


「…どーすっかなぁ」


しばらく経過観察、この仮説の検証を続行。
一息ついて、俺もその場を後にする。

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