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Side You
「…ね、惚気ていいよ」
「え?」
二人で無言でハンバーガーに食らいついているとやがて山本さんがにっと笑ってそういう。
「いくらでも聞くって言ったでしょ」
全然嫌味なくそんなことを言ってくれるので、つい私も話し出してしまった。須貝さんの隣に座れたこと、いつでも隣に来ていいといわれたこと、彼女のプレゼントの相談をしてくれたこと、何気なく髪の毛を触ってきたこと。あと横顔がかっこいいとか、何度か目が合ったとか、まるでただのオタクのような私の話を山本さんはにこにこ聞いてくれる。
…正面にいたわけだし、会話も聞いてたんだろうけど。
「かんちゃん、ほんとに好きなんだねぇ」
「自分でもびっくりですよ」
「やっぱさ、好きなこととかものとかのことになるとみんな楽しそうだよね」
「あー、クイズやってる時の皆さんそうですね」
「かんちゃんはね、今が一番楽しそう」
「そんなにですかぁ?」
でも確かに、自分がめちゃくちゃにこにこしてる自覚はある。私絶対叶わない片思いでこんなに楽しいんだもんな、めちゃくちゃコスパいいな。山本さんにすごいねぇ、何て言われるけど、正直に言うとわたしだって諦められるもんなら諦めたい。
わたしだって見込みがある恋愛がしたいけど、でもなぜか、好きになってしまったこの人のことがどうしても諦められない。私だってその理由が知りたい。
「またいつでも聞くからね。楽しそうなかんちゃんみると安心する」
「ほんとですか、ありがとうございます」
こんな純粋に応援してくれる人、というか認めてくれる人がいるのは心強い。
これからも気が済むまで好きでいよう。
最後の一本のポテトを口に放り、二人でまたオフィスへ戻る。
「来月からしばらく会えないじゃん、大丈夫なの」
「んーその間に諦められたらラッキー、だめだったら山本さんに写真送ってもらいます」
「わかった、任せて」
けらけら笑いながら、私の無茶なお願いにもこたえてくれるんだからほんとにやさしい。
あと一カ月弱、たくさん須貝さんと仲良くして、そんで私がいない間に、少しでも、私がいなくてなんだかさみしいとか思ってくれたらな。いつも隣にいた妹みたいなやつがいなくなって静かだなって、そのくらいあなたにとって当たり前の存在に成れたらいいなって思うのは望みすぎかな。
「戻りましたー」
「まーしたー」
ドアを開けた瞬間に、なぜかやたらにやにやしてる全員の視線を集めた。
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黄色い恐竜(プロフ) - なぎささん» コメントありがとうございます!ご丁寧にありがとうございます…!まだまだ知識が浅くて申し訳ないです、訂正と今後の参考にさせていただきます、これからもよろしくお願いします! (2020年5月9日 13時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ - はじめまして。作品の設定だったり、sgiさんの心理描写がリアルで読んでてとてもキュンとします!ご迷惑でしたら削除していただいて構わないのですが、現実のkwmrさんはsgiさんに敬語でお話しされているようです。もし現実に忠実な設定にされる場合はご参考ください! (2020年5月9日 3時) (レス) id: 72acd9cf45 (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - スイさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けていて嬉しいです…このもどかしいのが続くのが耐えられないので早々にラブラブさせようと思っています。これからもよろしくお願いします!実は私もスイさんのお話いつも拝読させていただいて、コメント頂けて嬉しいです! (2020年5月1日 0時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
スイ(プロフ) - はじめまして。いつもかんちゃんとsgiさんのもどかしさを楽しませてもらっております。後半にラブラブパートがくると聞いてさらにお話の続きが楽しみになりました…!陰ながら応援させて下さい。 (2020年4月30日 22時) (レス) id: 2b1fce6966 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄色い恐竜 | 作成日時:2020年4月20日 15時