12. ページ14
Side Sgi
改めて人間らしいといわれるとなんだかおかしくて、その場で小さく笑ってしまう。すると彼女が不思議そうな視線をこちらに送る。そのままさらに言葉が続いた。
「普段の須貝さんは、素ですか」
「そんな違う?」
先程頭の中で考えていたことをそのまま言われて、今度こそ吹き出してしまった。今の俺は、そんなに彼女が普段見ている俺と違うだろうか。なんと答えるのが正しいか、そのまましばらく空を見つめて考えた。
「どっちも俺よ」
それに尽きる。動画の前でも、ここでも、どちらも俺だからな。シンプルな返事ではあったが、彼女は納得してくれたようだった。
「なんか安心しました」
「そお?」
そう返してくれた彼女は、とっても穏やかな笑顔だった。この子、こんな風に笑うんだ、なんて思いながらそれならいいけど、と小さく続ける。春の風と優しい彼女の声が不思議と心地いい。いつもなら一人で佇むこの場にもう一人いることにあまり違和感はなかった。
ふと、彼女もここの常連なのか気になった。
「かんちゃんは良く来るの、ここ」
「んー、たまに」
「そっかー、だから会わなかったのかな」
その言葉にあまり偽りはなさそうで、ほんとにここに来るのは滅多にないのだろう。俺もしょっちゅう来るわけでもないし、タイミングがあわなかっただけだろうな。と、思っていると隣の彼女は何とも言えない顔…で、そうじゃないですか、と続く。んー、不思議な子だな。
いくらあったかくなってきたとはいえ、ずっと外にいて風にあたっていればだんだんと冷えてくる。少し強めの春の風に目を細めた。
「…もどろっか」
「そうですね」
オフィスへ戻ることを提案すると彼女も同意してくれる。肌寒くなってきたのは彼女も同じだったのだろう。
特に何を話すでもなく、並んでオフィスへと歩みを進める。少し前を歩く彼女の揺れるポニーテールを眺めながらぼんやりと、良くも悪くもなかった彼女との関係は、少しは良い方向へ転んだのかなと考える。
不思議そうに俺を見つめていた表情もあの安心したといった時の笑顔も、今日初めて見る神原の顔で。んー、いくら年下の女の子とはいえ、今まで近寄らな過ぎただろうか。同じ職場の仲間なんだし、もう少し仲良くなってもいいのかも。
なっていいのかも、というか。
まだあまり知らない彼女の素顔に、なぜか少し興味がわいていた。
582人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黄色い恐竜(プロフ) - なぎささん» コメントありがとうございます!ご丁寧にありがとうございます…!まだまだ知識が浅くて申し訳ないです、訂正と今後の参考にさせていただきます、これからもよろしくお願いします! (2020年5月9日 13時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ - はじめまして。作品の設定だったり、sgiさんの心理描写がリアルで読んでてとてもキュンとします!ご迷惑でしたら削除していただいて構わないのですが、現実のkwmrさんはsgiさんに敬語でお話しされているようです。もし現実に忠実な設定にされる場合はご参考ください! (2020年5月9日 3時) (レス) id: 72acd9cf45 (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - スイさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けていて嬉しいです…このもどかしいのが続くのが耐えられないので早々にラブラブさせようと思っています。これからもよろしくお願いします!実は私もスイさんのお話いつも拝読させていただいて、コメント頂けて嬉しいです! (2020年5月1日 0時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
スイ(プロフ) - はじめまして。いつもかんちゃんとsgiさんのもどかしさを楽しませてもらっております。後半にラブラブパートがくると聞いてさらにお話の続きが楽しみになりました…!陰ながら応援させて下さい。 (2020年4月30日 22時) (レス) id: 2b1fce6966 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黄色い恐竜 | 作成日時:2020年4月20日 15時