冷めた欲望に咽び泣いて瞼の中。 (ページ25)

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第六章、昔の古傷。ページ25

俺の家はバレーボール一家だった。

父は元日本代表の現監督。

母は元プロのビーチバレー選手。

俺より10年上の兄はVリーグ選手。

俺は物心ついた時からバレーボールに触れてきた。

小学校に入ってすぐ、地区の少年団に入団した。

幼い頃はそれなりにバレーが好きだった。

というか、それ以外の事を知らなかった。

『Aー！一緒にドッヂボールやろうぜ！！』

『ごめん、父さんに怒られるから…。』

『そんなの黙っときゃヘーキだって！』

一回、体育の時間に突き指をしたことがあった。

その時父さんは俺の頬を力強く引っ叩いた。

その衝撃でよろめいて地面に倒れこんだことを覚えている。

『そんな指でバレーができると思っているのか！！』

『でも、ちょっとだから…。』

『その”ちょっと”が大きなズレを生むんだ！正直お前には失望した。』

『…父さん、…………？』

正直言って、うちの親は頭がおかしかった。

自分ができなかった”完璧な選手”を息子に押し付けて、

息子をバレーボールに特化した人間に育てようとしていたらしい。

確かにそうだった気がする。

食事の栄養管理は勿論徹底。

お菓子やジュースなんて以ての外。

おやつの代わりにフルーツ。

そんな生活に嫌気がさしたのは、中学に上がってしばらくしてからだ。