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その後、組織の下の者が遺体を引き取り血痕を処理し屋上は元の姿に戻った。バーボンは大人しく帰り、今ここにいるのは私とライだけ。
二人でスコッチの亡くなった場所を挟むように壁に背中を預けた。
『ねえ、ど「どうしてこんなことに? なんて聞かれても答えないからな」はぁ……』
「……ため息じゃない、だろ? 」
『ふふっ……そうね』
いつかの会話が立場を逆にしてそのまま繰り返される。そんなことが出来るくらいには秀兄も私も比較的落ち着いていた。
「それにしてもその反応……A、何時から気づいてた? 」
前を向いたまま話していた秀兄が私の方を見る。秀兄が気になるのも無理はない。きっと疑っていたには違いないけれども確証なんてスコッチはそう簡単には見せなかっただろうから。最初の日かな、とそう溢せば秀兄の目が鋭くなるが気にしない。
『真っ直ぐな、正義に生きる人の目だった』
「そうか…… 」
帰ろう、そう私が問いかければ秀兄もそうだな、と返す。私たちは屋上を後にした。
秀兄の車の助手席に乗り私たちは家までの道を走る。いつもは気にならない街の明かりが今はひどく目に眩しい。それらは私がスコッチの死にショックを受けているを示していて……
『私が終わるとき、どんな景色をみていられるのかな』
なんて柄にも無いことをつい、溢してしまう。当然横で車を運転する秀兄は虚を衝かれた様な顔をしていた。
『彼は誇り高き日本の桜として、敵地に潜入して……散った。きっとそれは、あのときの彼の判断の中では最善のもの。でも、彼は結末をその目で見る権利を失った』
「ああ、でも彼の判断は間違っていない。彼が舞台を先に降りた分、俺たちは終幕まで舞台に残る必要がある。俺たちの望む方向に物語を紡ぐために」
『物語を紡ぐ、か……』
秀兄の言っていることは正しくて、きっと私たちは今たくさんの欲望や因縁にまみれた舞台の上にいる。改めて考えると難しいことばかりだ。
私の望む終幕って何だろう。
私は舞台のエピローグ……物語の全てが終わった時、何処で、何をしているんだろう。
一人で思考の海に沈んでいれば頭の上に大きな手が乗せられた。前を見れば赤信号で、大きな手は青になるまでの間私の頭を撫で続けてくれる。
「 A 」
静かな声が私を海から引き上げる。
その声に、何故だか……無性に、泣きたくなった。
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FluteMagic(プロフ) - 明里香さん» 失礼しました(*- -)(*_ _)ペコリ ご指摘ありがとうございます。修正させて頂きました。 (2019年6月10日 8時) (レス) id: a012491fd6 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 22話にも誤字がありました。「外していあかな」ではなく、「外していいかな」です。 (2019年6月10日 0時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 14話に誤字がありました。「再開の場」ではなく、「再会の場」です。 (2019年6月10日 0時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
FluteMagic(プロフ) - もふうさぎさん» ありがとう!!…がんばる。温かく見守って下さい・・ (2017年12月19日 22時) (レス) id: 9afb2fa1a5 (このIDを非表示/違反報告)
もふうさぎ - 読ませていただきましたっ!とても見やすくていいと思いますよ!これからも更新頑張ってくださいねヽ(*≧ε≦*)φ (2017年12月19日 20時) (レス) id: e534d00e51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mpptt8231/
作成日時:2017年11月22日 21時