35 ページ41
『バーボン!! 』
直後、スパイに見られていようと構わないという勢いで階段を昇る彼を私は必死で追いかけた。
ビルの屋上、息を切らして昇った先で彼は立ち尽くしていた。こちらを振り返ることはなく夜であることもありその表情を読むことは出来ない。
視界からバーボンの背中を取り払う様にその隣に立てば目に見えたのは、
「裏切りには……」
壁に付いた酷い血痕、
「制裁を持って答える……」
まだ硝煙の立つ銃、
「だったよな?」
そしてその銃を持つライと壁に背を付けて座ったまま動かないスコッチの姿だった。
『どうして、「しっかりしろスコッチ!!……スコッチ!? 」……』
目の前の状況とライの言葉に空いた口が塞がらない私に対して、バーボンはスコッチに駆け寄り声を掛ける。
「……クソッ!! 」
「心臓の音を聞いても無駄だ……死んでるよ」
(嘘よ、こんなのあって良いはずがない。だって、彼らは公安だけれど……ライ、いいえ秀兄貴方だって……!)
「拳銃で心臓を……ブチ抜いてやったからな……」
『……!! 』
ターゲットの死には慣れている。組織の元関係者、邪魔になる相手、私たちの周りにはあまりに死が溢れている。
でも、ターゲット以外の死は何度見ても慣れない。命の選別の様だけど、私は一緒に笑ったりした人の死が重い。
組織に連絡する振りをして携帯を取りだし二人に背中を見せる。二人は胸ポケットがどうだとか話しているけど気にしない。
(世界は正直者が損をする……生きて欲しい人が死んで、悪いやつが生き延びる。私は、救えたかもしれない命を取り零した……)
落ち着いて、赤井A……気丈に振る舞うの。貴女なら出来る。携帯で連絡を受けた振りをしてこの場で指示を出すのよ。
「……幽霊を殺したみたいで君が悪いぜ……」
そう自分に言い聞かせているとライが屋上を後にしようとしていた。大丈夫……ここからは私の番。
『ライ! 待って……
「……サングリア、報告なら俺が」
報告は後。私と一緒に死体の引き渡しをしてから行きましょう?』
「引き渡しなら僕が……
『バーボン、貴方はこのまま帰って』どうして……!! 」
驚くそれぞれに私はタイムアウトで暗い画面になった携帯を軽く示してみせる。
『……上からの指示。分かった? 』
169人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
FluteMagic(プロフ) - 明里香さん» 失礼しました(*- -)(*_ _)ペコリ ご指摘ありがとうございます。修正させて頂きました。 (2019年6月10日 8時) (レス) id: a012491fd6 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 22話にも誤字がありました。「外していあかな」ではなく、「外していいかな」です。 (2019年6月10日 0時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 14話に誤字がありました。「再開の場」ではなく、「再会の場」です。 (2019年6月10日 0時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
FluteMagic(プロフ) - もふうさぎさん» ありがとう!!…がんばる。温かく見守って下さい・・ (2017年12月19日 22時) (レス) id: 9afb2fa1a5 (このIDを非表示/違反報告)
もふうさぎ - 読ませていただきましたっ!とても見やすくていいと思いますよ!これからも更新頑張ってくださいねヽ(*≧ε≦*)φ (2017年12月19日 20時) (レス) id: e534d00e51 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:綾 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mpptt8231/
作成日時:2017年11月22日 21時