あの瞬間に。 (ページ1)

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サークルの飲み会で貸切の居酒屋はいつも以上に騒がしい

「Aはあんま飲むなって」

「ぜんぜんへいきだし、湧うるさい〜」

「お前、酒弱いじゃん潰れんなよ」

そんなことないもん、って言ったらはいはい、と目尻をクシャッとさせた笑顔で返された。多分、女の子にモテる理由の一つ。口悪いくせに人当たりが非常に良くてコミュ力も高めだ。

お店に来た順で席に座ってたけどいつのまにかさりげなくわたしの隣にきた彼はいつも通り。

「明日も一限だろ」

「それは湧もでしょ？」

「休むし…って思ってたけど単位やばいんだわ」

「うんしってる(笑)」

マジやべーーって言いながら机に項垂れる湧をみて目の前にあったレモンサワーを1口飲むと何かを思い出したような顔をした。

「そういえば、店長がAに感謝してたよ」

「あ～、この前のあれ！ほんとうに大変だったんだよ」

「まじ次の日シフト俺と颯太だったんだけどお前のこと一生褒めてたから何事かと思った(笑)」

雪でも降るのかと思った、なんて笑った湧のあたまを軽く叩くと「ねえーなんか俺の名前呼んだでしょ？」とふわっと登場したのは颯太くん

「この前Aのこと店長が褒めまくってたよねって話」

「あーあれか！Aちゃん1人で18時から1時間ホール回したんでしょ？しかも金曜日」

ついさっきまで颯太くんがいた席の後輩の女の子たちは、「え～内村先輩〜まだ話しましょうよ～」なんて大きな声で言ってるのに･･･当の本人は何も聞こえてないかのように『金曜日だしたいへんだったねえ、』と言いながら片手にジョッキを持ってわたしの前に座る颯太くん。

「ヘルプの子が時間ミスったらしくて･･･けっこうほんきで死んだかと思ったんだよ？」

「えらいえらい、お疲れさまでした」と長い腕をわたしの方に伸ばしてきて頭をポンポンとされる

「あーうちむ！！俺のAちゃんに触らないで！」

「黒ちゃんのじゃないでしょ！」

「どっちのものでもないでしょ！Aはわたしのですー」と救世主のマキちゃんが別卓で開催されてた激しい飲みを終えてこっちにきてくれた。高校から一緒で綺麗で性格が良すぎる自慢の友だち。

まあ、いつも通り、既にベロベロなマキちゃん。
マキちゃんが颯太くんにだる絡みして颯太くんもそれに乗ってふざけて湧にとめられる、そんな図をみてにこにこしてるわたし。そう、いつも通りだ。

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