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その大きな背中に、記憶の中の人を思い出した。
背の高い、大きな背中の彼も、侑くんと同じように毎日必死にバレーボールを触っていた。
高校生の頃、わたしは彼を友達と一緒に追いかけていた。ミーハーなわたしに付き合ってくれていた友達には感謝してもしきれない。
毎日、飽きることなく追いかけた彼は、今はテレビの向こう側にいた。
『灰羽リエーフってモデル、知らない?
ロシアと日本のハーフで、最近人気なんだけど』
彼の名前を口にしたのは、随分と久しぶりな気がした。
それほどまでに、彼が遠くの存在になっているのかもしれない。かもしれない、じゃなくて、事実そうなのだけれど。
「……聞いたことある気ぃも、しなくもない」
『はい、分かりやすく拗ねないでください』
背中を丸めて、スマホでその名前を検索しだした侑くん。
しばらくして画面を見ながら小さく震えだした。そんな侑くんの頭を治くんが軽く叩く。
小さな乱闘が始まって、ふとカウンターに置かれた侑くんのスマホに目がいった。
正確には、そこに映し出されている、眩しいほどに輝く彼の姿に目がいった。
「なんっでなん!
こんなん顔以外勝てるとこあらへんやん!」
「いや、顔が勝てる思てるのも間違いやな」
侑くんが見ていたのは、先月公開されたブランドのポスター写真だった。
ブランドロゴの総柄の少し派手なスーツも、高さのある革靴も、ちょっと濃く施されたメイクも、長身でスタイルも良くて、ハッキリとした目鼻立ちの彼にとてもよく似合っていた。
「高身長モデルがなんぼのもんやねん!!」
『え、ちょ、侑くん?』
バン、とカウンターを叩きつけるようにしながらスマホをとった侑くんは、そのままお店の入口まで大股で歩いていった。
大きな音を立ててドアが開けられると、すぐさま治くんからお叱りの声が飛ぶ。
侑くんは、それにわかりやすく顔を歪めた。
「何やねん、Aもサムも!
待っとれよ!こんなんすぐに俺もなったるわ!!」
『……なる、って』
鼻息荒くそう言い捨てて、そのまま振り返ることなくお店を出て行った。
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さな(プロフ) - ラブリーハートのプリキュアさん» ラブリーハートのプリキュアさん、ありがとうございます!身に余るお言葉、、嬉しいです😂侑くんらしさを出せるよう頑張ります!ぜひよろしくお願いします! (2023年3月6日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ラブリーハートのプリキュア - 初めの文から好きです。なんかもうあの語彙力が神ってて!!表現の仕方が好きです。まさかこのシリーズに侑君が出るとは。頑張って下さい! (2023年3月5日 9時) (レス) @page1 id: 0b96e038f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2023年3月5日 0時