侑くんと好きなタイプ ページ11
「そういや、Aのタイプってどんな男なん?」
カウンターに肘をついて、姿勢を崩した侑くんは口元に海苔をつけてそう言った。
質問には答えず、自分の口元を指さしてそれを教えると、ハッとしたように袖で口を擦りはじめる。
「どや!とれたか?」
『うん、バッチリ』
「ツム、お前そんなガキっぽいことばっかしとったら、すぐ愛想つかされんで」
「そうならんために好きなタイプ聞いとるんやろがい!」
治くんに噛み付く侑くんの口元は、海苔はとれたけれど擦りすぎで赤くなってしまっていた。
そんな様子を微笑ましく思っていると、ほんでタイプは!と勢いよく振り向いた姿に思わず顔が引きつった。
この流れでスルーできないかと思っていたけれど、そうもいかないらしい。
カウンターの向こうで肩をすくめた治くんを見て、侑くんから逃げることを諦めた。
おにぎり宮に通うようになって1か月も経てば、店主の治くんとは大分打ち解けた。
試合もあるだろうに、頻繁にお店に来ているらしい侑くんとも、かなり親しくなったのだと思う。
少なくとも、侑くん治くんと呼ぶことに抵抗はなくなっていた。
『そういうの、あんまり考えたことないかな』
「背ぇ高いヤツ、とか、スポーツ選手、とか、関西人、とか何かしらあるやろ」
『…それ、何か誘導的じゃない?』
まるで誰かを想起させるようなその羅列。
侑くんは至極真面目に言っているからこそ、こういう時には心臓がうるさい。
親しくなったとは言え、彼に告白をされた事実は変わらない。
友達から、ということで落ち着いてはいるけれど、侑くんからのこうしたアプローチは続いていた。
本気で嫌ならば、このお店に来なければいいだけだとわかっていた。双子の治くんがやっているこのお店に来ている以上、彼との繋がりも切れることはない。
わかっていてここに来ているわたしは、もしかしなくても、とても思わせぶりなずるい女なのだと自覚はあった。
それでも、どうしていいかわからなかった。
『あー、ずっと好きな芸能人はいるよ』
「おお、芸能人なんてツムと対極やん」
「はぁ!?俺かてテレビも雑誌も出るし、この前はバラエティ番組も出たんやで!」
『バラエティも?すごいね』
「やろ!つまり俺ってことやんな!?」
振り返った勢いで、テーブルが大きく音を鳴らした。それに治くんの顔が歪む。
それは違うけど、と返すと、侑くんはわかりやすくそっぽを向いた。
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さな(プロフ) - ラブリーハートのプリキュアさん» ラブリーハートのプリキュアさん、ありがとうございます!身に余るお言葉、、嬉しいです😂侑くんらしさを出せるよう頑張ります!ぜひよろしくお願いします! (2023年3月6日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ラブリーハートのプリキュア - 初めの文から好きです。なんかもうあの語彙力が神ってて!!表現の仕方が好きです。まさかこのシリーズに侑君が出るとは。頑張って下さい! (2023年3月5日 9時) (レス) @page1 id: 0b96e038f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2023年3月5日 0時