・ ページ3
何も知らないのに、どうして名前を呼んだだけでそんな顔ができるのか。
わたしからの声かけに、わかりやすく顔を輝かせた宮選手に、少し驚きながら言葉を重ねた。
『今、初めてお会いしましたよね』
「まぁ厳密に言うたら、俺はあんたのこと朝から見とったから初めてではないな」
小学生のような屁理屈。
それを堂々と、何なら少し自慢気に言う姿は何だか憎めなくて。
少しだけ、この人が人気になる理由がわかった気がした。
それと同時に、こんなスター選手がどうしてわたしにこんなことを言っているのかは、どんどん分からなくなっていく。
『……だからです。
わたしは宮選手のこと、”宮選手”としか知らないですし、宮選手もわたしのこと、知らないじゃないですか。
好き、も、付き合う、も、正直ピンとこないで
す』
ごめんなさい、ともう一度きちんと頭を下げた。
自分の爪先を見ながら、もしかしてとてつもなくもったいないことをしているのでは、と思い始めたけれど、ここで折れてはいけない。
いや、そりゃまぁイケメンは好きだし?
現役スポーツマンっていうのも嫌いじゃない。
筋肉とか滴る汗とか、嫌いなわけない。
さっきまで観てた試合に出てた選手も、みんなかっこよかったし、ワーキャー言われるのも納得できる。
何ならわたしだってワーキャーしたい。
仕事じゃなかったら今日だって叫んでた。
でもそれは、彼らが遠い存在だからできること。
近づきすぎれば、意味をなさない。
今、彼がわたしに望んでいることは、どう考えたって近すぎる。
だから、これが最善だと自分に言い聞かせたのに。
「……名前は?」
『はい?』
「せやから、名前!」
『え、と、AA…ですけれど』
突拍子もない質問に、反射的に顔を上げてしまった。勢いに流されるまま名前を言えば、宮選手は満足そうに笑った。
その笑顔が、テレビやコートで見るものとは違って見えて、心臓がキュッとなった。
まるで、テレビで推しを見ている時のような感覚。つい身体が熱くなった。
175人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さな(プロフ) - ラブリーハートのプリキュアさん» ラブリーハートのプリキュアさん、ありがとうございます!身に余るお言葉、、嬉しいです😂侑くんらしさを出せるよう頑張ります!ぜひよろしくお願いします! (2023年3月6日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ラブリーハートのプリキュア - 初めの文から好きです。なんかもうあの語彙力が神ってて!!表現の仕方が好きです。まさかこのシリーズに侑君が出るとは。頑張って下さい! (2023年3月5日 9時) (レス) @page1 id: 0b96e038f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さな | 作成日時:2023年3月5日 0時