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「大丈夫すか」
『え、ああ…おかげさまで。
ありがとうございました』
あれからすぐに警察が来て、男は連れられていった。彼女も俺も聴取とかあんだと思ってたら、それは後日にされたおかげで、この場所に二人残された状況。
無言で立ち去るのもキモい、と考えて声をかければ、彼女はごく自然に感謝の言葉を紡ぐ。
それと同時に下がった頭に、ちょっと面食らった。
『わざわざ走ってきてくれてましたよね？』
「あー、まぁ」
『ああいう時、見て見ぬふりをする方が多いから、嬉しかったです』
そう言ってもう一度丁寧に下がった頭をぼんやりと眺める。
んなこと言ったって、俺はあの男の肩を掴んだだけだ。それ以上は何もしなかった、というよりできなかっただけに虫の居所が悪い。
「結局、そっちが絞め上げてたじゃないっすか」
『あの男の気を引いてくださったからです。
それに、自己防衛は大事ですから』
「自己防衛とかの域じゃねぇだろ…」
特に表情も変わることなく淡々と告げる様子が、何だか癪だった。病棟じゃあんなに愛想振りまいてたからか、正直面白くない。
ぼやくようなそれは思わず口に出ていて。
まずい、と思った時にはもう遅かった。
何となく、温度が下がった気がした。
目線を上げると、冷ややかな顔をした彼女と目が合った。
『何か問題でしたか？』
「…いや」
気が強いっつーか、やっぱ怖ぇ。
それ以上、彼女が何か言うことはなかったけど、俺も何も言えなかった。
もう帰っていいかな、なんて思ってさりげなく歩き出した俺につられるように、彼女も歩き出す。
別に隣とかじゃない。前後でもねぇけど、他人っていうような、微妙な距離。
さっきまでいたバス停までたどり着けば、そこでようやく隣に並んだ。
『今日も、茂庭さんのお見舞いですか？』
「あーそうっすね……って、え？」
『あ、すみません。
いつも来られてるから今日もかと』
今日は病棟でも茂庭さんのとこでも会わなかったから、覚えられてることにちょっと驚いた。
まぁあんだけ頻繁に来てるヤツらがいれば、嫌でも覚えんのか。
そう思うと、何となく全身がむずがゆい。
「……違くないっすけど」
マフラーに顔を埋めながら、小さく答える。
時差のあるその答えに、彼女は返事をするでもなく口元に綺麗な弧を描いた。
この寒い中マフラーもしていない。
見てるだけで寒いのに、どうしてか体温が上がった気がした。
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さな(プロフ) - 柴田んぬさん» 柴田んぬさん、ありがとうございます！楽しんでいただけるように頑張ります！ (2023年1月22日 22時) (
レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
柴田んぬ - このお話すごく好きです！応援しています^^ (2023年1月22日 16時) (レス) @page5 id: 8796ade977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さな | 作成日時：2023年1月20日 18時
