19 ページ19
「二口ってさ、そんなヘタレだったっけ」
大量のホイップクリームが盛られた、甘そうな飲み物を飲みながら、滑津は盛大なため息を吐いた。
うるせぇ、とこぼすと、すぐさま睨まれた。クソ怖ぇ。
最近人気らしい、女ばっかいるしゃれたカフェを待ち合わせ場所に指定した滑津は、会うや否や甘そうなやたらデカいパフェを俺に注文させた。今飲んでるのは、パフェを食べ終わって追加で頼んだものだった。
もはや飲んでんだか食べてんだかわかんねぇ。
よくもまぁそんな甘そうなものを、しかも人の金で食べられるもんだと思うけど、呼び出したのは俺だから、文句は言えないのがまたムカつく。
「で、連絡先も自分で聞けずに相手にお膳立てされて、ようやくデートできてる二口くんは、今度は何に悩んでるのよ」
「お前、何か昔より口悪くなってね?」
「パフェもう一個頼んじゃおっかな〜」
「あー、ったく、分かったからそれ以上食うなよ。
ブスな上、太ってたら男が逃げ…」
「ん?何か言った?」
笑顔で圧をかけてくる滑津に、返事の代わりに顔を歪めて見せてやったら無視された。
滑津と会ってからもう1時間近く。
Aのことを相談し始めてから、ずっとこんな調子だった。
女のことを相談するとなると、青根じゃ話にならない。相手が相手だから、鎌先さん笹谷さんも絶対面倒くさい。
茂庭さんも、何かちょっと複雑だった。
となれば、頼れるのは滑津くらいになるわけで。
「で?結局、何の相談なの」
「相談っつーか、イマイチ向こうの考えがわかんねぇっつーか」
「ご飯行ったりしてるんでしょ?
連絡先ももらってるし、普通に考えて、向こうだって悪い気はしてないと思うけど」
「いやまぁ、そうなんだけど」
あの日、帰り際にAから渡されたのは電話番号とラインのIDが書かれた紙だった。
家に帰るまで待てずすぐに送ったメッセージには、これからもよろしく、なんて返事がきた。
おかげで、見舞いはなくなったけど、Aとは何回か会ってはメシ食ったり飲んだりしていた。この前なんて、初めて昼から普通に出かけた。
つまりは順調だった。そりゃもう怖ぇくらい。
「向こうの気持ちが、正直読めねぇ」
「……あんた本当に二口?」
「らしくねぇことくらい分かってるっつーの」
もうすっかり氷の溶けたアイスコーヒーを、ストローでぐるぐるとかき混ぜた。
219人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さな(プロフ) - 柴田んぬさん» 柴田んぬさん、ありがとうございます!楽しんでいただけるように頑張ります! (2023年1月22日 22時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
柴田んぬ - このお話すごく好きです!応援しています^^ (2023年1月22日 16時) (レス) @page5 id: 8796ade977 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さな | 作成日時:2023年1月20日 18時