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『大事な仲間、って言ってた』






静かな声で告げたAは、少しだけ嬉しそうに頬を緩めた。


情報の出どころなんて、聞いたはいいけどほぼ一つしかない。予想通りの人物の名前に文句の一つや二つ出そうになったのに、予想外のその表情に言葉を飲み込んだ。




押し黙った俺に気を遣うように、ゆっくり続ける。






『茂庭さん、面会の時には必ず部屋にいるでしょ?

他の患者さんはリハビリとかしてるのに、変だと思ったことない?』






その言葉に、ここ最近の見舞いを思い出す。

確かに、行くたびに鎌先さん笹谷さんがいたけど、そもそもの話で茂庭さんも絶対部屋にいた。
いるだけじゃない。どれだけ長い時間面会してても、その後もずっといた。





言われてみればそうだ。
茂庭さんは怪我して入院してる。

リハビリをして、松葉杖でそこそこ歩けるようになったら退院だって最初の頃に言っていた。
早く退院できるように頑張るな、なんて笑っていたのに、その頑張っているところを、俺は一度たりとも見たことがない。



一度たりとも。





俺の動揺を見透かしたかのように、Aは小さく頷いた。






『リハビリ、全部午前中に詰め込んでるの。

午後にアイツらが来る時には部屋にいて、少しでも長く話していたいからだって教えてくれた』

「…何も聞いてねぇんだけど」






もしかして、と思った通りの答えに背中がむずがゆくなる。



何も聞いていない。
そんなに無理することも、カッコつけることもないと噛みつきたくなるけど、それもできない。



だって茂庭さんはきっと、カッコつけてるわけじゃない。単純に、本当に単純に、俺らとの時間を大事にしてるからこそのことなんだろうと分かるから。


茂庭さんは、そういう人だ。






『茂庭さんって、そういうところあるよね』

「……」

『でもそういう関係、ちょっと羨ましい』






そういうところあるよね。



その言葉だけが、切り取られてふわふわと宙を舞う。

俺だって思ったことなのに、俺とコイツが言うのとでは全然意味が違う。



何気なく言われたそれから、茂庭さんがコイツに気を許しているであろうことや、コイツもまた茂庭さんに心を開いているような様子が目に見えてしまった。



率直に思い浮かんだのは、悔しい、だった。
そんなこと思うような関係じゃないのに。

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さな(プロフ) - 柴田んぬさん» 柴田んぬさん、ありがとうございます!楽しんでいただけるように頑張ります! (2023年1月22日 22時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
柴田んぬ - このお話すごく好きです!応援しています^^ (2023年1月22日 16時) (レス) @page5 id: 8796ade977 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さな | 作成日時:2023年1月20日 18時

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