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日曜の昼下がり。
鎌先さんから急に電話があったと思えば、茂庭さんが病院に運ばれたってだけ言って電話が切れた。
何がどうなってんのかもわかんねぇし、とりあえず茂庭さんに連絡してみてもやっぱり繋がんねぇし。
やべぇことになってるんだと思って慌てて駆けつければ、そこにはケロッとして手を振る茂庭さんがいた。
ぜんっぜん意味わかんなかったけど、茂庭さんの後ろで腹抱えてゲラゲラ笑う筋肉バカとおっさんを見て、その瞬間、全てを理解した。
理解したくなんかなかったけど。
「くっ、クク…
あの時の二口、まじ面白かったもんなぁ!」
「茂庭さん!!っつって、ふふ…すっげぇ顔して」
「お前がそんなに俺の心配してくれてたなんて、
俺はもう嬉しくて嬉しくて…!」
「この人の言い方が悪いんすよ!!!」
思い出したのかまた笑い出した鎌先さんを指させば、病院内じゃ静かにしろと茂庭母さんにたしなめられる。
それにも何かむしゃくしゃして、半ばヤケクソのように飲みもん買ってくるため、なんて言い訳して病室を出た。
「ったく、あの人ら…」
エレベーターホールで一人なのをいいことに先輩らの文句をひとりごつ。
イライラしてんのに、さっきの先輩らを思い出せば自然と深い息が出た。全身の筋肉が、一気に弛緩する。
ムカつくけど、自覚してたよりも気張ってたっぽい。
あの時、鎌先さんからの電話を受けた時、世話になった先輩の危機に、自分でもビビるくらい焦った。
だからっつーか、なんつーか、茂庭さんの怪我が大したことなかったこと、単純にすげぇ安心した。
足に巻かれたギブスは痛々しいし、しばらく思うように動けねぇってのはあれだけど、あんだけ騒げてりゃまぁ大丈夫だろ。
ふいに視線を感じて振り返れば、ナースステーションからこっちを覗く例の看護師がいた。
さっきと同じように会釈をされ、無言で会釈とも言えないような頭を軽く下げるだけのもんで返す。
笑った顔を正面から見るのは初めてだった。
確かにあれは綺麗だ。
先輩達が騒ぐのも頷ける。
けど、どっか違和感。
茂庭さん達は優しいって言ってたけど。
『あれ、絶対気が強いタイプだろ』
エレベーターの中、ひとり言はやけに響いた。
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さな(プロフ) - 柴田んぬさん» 柴田んぬさん、ありがとうございます!楽しんでいただけるように頑張ります! (2023年1月22日 22時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
柴田んぬ - このお話すごく好きです!応援しています^^ (2023年1月22日 16時) (レス) @page5 id: 8796ade977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2023年1月20日 18時