58 ページ15
「おねーさん、梟谷のマネージャー？」
『いや…バレー部に幼なじみがいるってだけで』
「へー！強豪に幼なじみ！いいなぁ！
あ、俺、日向翔陽！1年！」
『AAです。梟谷の1年で…』
「え！同い年じゃん！」
日向くんは、歩きながらずっとしゃべっていた。
さっきは食堂に忘れたタオルを取りに行った帰りだったこと。
この合宿で強いチームと試合するのが楽しみなこと。
音駒と試合できるのが嬉しいこと。
わたしも音駒知ってるよ、と言えば、目をキラキラさせて音駒について教えてくれた。
「ここ！体育館！梟谷もここにいるよ！」
『あ、ありがとう、日向くん』
「日向でいいって！
じゃ、俺戻るから、Aさんはゆっくりしてって！」
最後までニコニコして手を振ってくれた。
嵐みたいな、太陽みたいな男の子。
日向くんに感謝をしながら、ちょっとだけ、と自分に言い聞かせて、場所を移動する。
できるだけ目立たない場所を探していると。
すぐに聞き慣れた、大好きな声が聞こえてきた。
「ヘイヘイ、ヘーイ！」
ほぼ反射的に中を覗くと、予想通り。
重いスパイクが決まる音がして、ガッツポーズを大きく掲げて笑う光くんがいた。
「うるせぇこのフクロウ！
すぐに黙らせてやるから覚えとけ！」
「やめてクロ、バカに見える。
木兎さんを止めるのは難しいんじゃない」
「そうだぞ、バカがバレる。
絡むのもほどほどにして、次拾うぞ！」
よく見ると、光くん達の今の相手は音駒高校だった。
光くんに食ってかかる黒尾さんも、それを制するセッター孤爪さんも、夜久さんも。
コートの中の彼らはみんな、光くんを見ていた。
「すっげぇあの4番！あれが梟谷のエースかぁ！
な！今の見たか影山！」
コートの隅では、さっき別れたばかりの日向くんが鼻息荒く叫んでて。
その対象が誰であるかは、すぐにわかった。
「梟谷の木兎くんは、何故だか応援したくなる魅力がありますね」
「そうだな。敵味方関係なく、選手の士気を高めちまう選手かもな」
日向くんの横で。
監督らしき人達が見ているのもまた、光くんだった。
味方も敵も、どんな人も光くんを見て、光くんの姿に、光くんのバレーに、気持ちを動かされていく。
光くんは、そういう人だ。
光くんのバレーは、光くんにとってのバレーは。
『……やっぱり、敵わないなぁ』
わたしのすべきことが、やっとわかった気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 202人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さら(プロフ) - 登場人物の心情や状況を色々な方法で表しておられ、こだわりを感じました。特に浴衣の色の対比にグッと来ました。主人公も赤葦のそういう真っ直ぐなところにやられたんだろうなぁ、と、結婚式までのお話も読んでみたくなりました！素敵な作品をありがとうございました！ (2月21日 18時) (
レス) @page40 id: 3384d29a03 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - Renaさん» Renaさん！最後まで読んでいただきありがとうございます！このお話が最高だなんて…初めての完結作品だったのでたくさん読んでいただき本当に嬉しいです。ありがとうございます！！ (2023年1月22日 22時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
Rena(プロフ) - 完結おめでとうございます！この小説見つけてから毎日毎日ケータイに穴が開くぐらいまで読んで、たくさん笑って、泣いて、最高の小説でした、こんな最高な小説を作ってくれて、完結してくれて、ありがとうございました、完結するのはとっても悲しいですけど嬉しいです、 (2023年1月21日 19時) (レス) @page40 id: 89e66a43fb (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - マロさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます！温かいコメント、とても嬉しかったです。これからマロさんのコメントなしでどうすればいいんだァアアア！！ (2023年1月21日 11時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
マロ(プロフ) - 完結ありがとうございます！そしてお疲れ様でした。毎日更新をとても楽しみにしていました。これからなにを楽しみにやっていけばいいんだァァァァア｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ (2023年1月20日 20時) (レス) @page35 id: 608bd786c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さな | 作成日時：2023年1月7日 11時
