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(赤葦side)
別に、バレーは好きでも嫌いでもなかった。
手は抜かない。真面目にやる。
でも、熱中はしない。できない。
そんな俺が、この人にトスを上げたいと思った。
生き生きと心から楽しそうにバレーをする姿に、強く惹かれて、憧れた。
「木兎さん」
「ん？おー、あかーし！！」
体育館。
部活が始まるまでまだ余裕のある時間でも、木兎さんは一人ストレッチをしていた。
この人はいつだってそうだった。
誰よりも貪欲にバレーを楽しんで、そのための努力は惜しまない。手を抜くことを知らない。
そんな人が、俺を見つけて嬉しそうに声を張り上げるのには、入学して1年以上経つ今でも心が浮き立つ。
それも、数日前のAさんを思い出して、
今日俺がするべきことを思うと、すぐに沈んでいった。
俺が、今、何を言いに来たのか。
この人はきっと露程も考えてはいないのだろう。
「今日はあかーし、来んの早くね？
最近、部活ギリギリに来てたもんなぁ」
「……そうですね。
最近は部活前に、Aさんと会ってたので」
半分本当で、半分は嘘だ。
最初こそ会っていたものの、合宿以降は俺が勝手に待っていただけで会っていない。
それでも、タイミングよく流れを作ってくれた木兎さんにそのまま乗っかって、あえて挑発的な言葉を選んだ。
それにわかりやすく目を見開いておいて、
そっか、で済まそうとするこの人がわからない。
「ふーん、今日はいいの？A」
「はい。
今日は、木兎さんに話があって早く来たので」
そっかー、と気の抜けるような返事が返ってきて、
自分の眉が寄るのがわかった。
数日前、彼女に大口を叩いたけれど。
これで本当にこの人が動くのか、少し不安を覚える。
秘策だなんてバカらしい。
でも、今の俺にできることはこれしかないから。
「……木兎さん、お話したいことがあります」
「さっき聞いたぞ。
何だよあかーし！顔怖いんだけど！」
Aさんのため。
そう思ってはいても、手が震えた。
言えば、もう戻れない。
もう、冗談でした、では済まされない。
誰かに、それも木兎さんに言ってしまえば。
でも、これが最善だ。
木兎さんがAさんを、ちゃんと迷いなく選べるように、俺ができること。
俺は、俺ができることを、やるだけだ。
「……好きに、なってしまいました」
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さら(プロフ) - 登場人物の心情や状況を色々な方法で表しておられ、こだわりを感じました。特に浴衣の色の対比にグッと来ました。主人公も赤葦のそういう真っ直ぐなところにやられたんだろうなぁ、と、結婚式までのお話も読んでみたくなりました！素敵な作品をありがとうございました！ (2月21日 18時) (
レス) @page40 id: 3384d29a03 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - Renaさん» Renaさん！最後まで読んでいただきありがとうございます！このお話が最高だなんて…初めての完結作品だったのでたくさん読んでいただき本当に嬉しいです。ありがとうございます！！ (2023年1月22日 22時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
Rena(プロフ) - 完結おめでとうございます！この小説見つけてから毎日毎日ケータイに穴が開くぐらいまで読んで、たくさん笑って、泣いて、最高の小説でした、こんな最高な小説を作ってくれて、完結してくれて、ありがとうございました、完結するのはとっても悲しいですけど嬉しいです、 (2023年1月21日 19時) (レス) @page40 id: 89e66a43fb (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - マロさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます！温かいコメント、とても嬉しかったです。これからマロさんのコメントなしでどうすればいいんだァアアア！！ (2023年1月21日 11時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
マロ(プロフ) - 完結ありがとうございます！そしてお疲れ様でした。毎日更新をとても楽しみにしていました。これからなにを楽しみにやっていけばいいんだァァァァア｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ (2023年1月20日 20時) (レス) @page35 id: 608bd786c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さな | 作成日時：2023年1月7日 11時
