09 ページ9
赤葦先輩もわたしと同じだと気づいてからは、
怖いと思うことはなくなった。
それどころか光くんを好きなもの同士として、
変な親近感すら抱くようになった。
とはいえ特別接点もないわたし達が会うことはなく。
ただ時折、
光くんと一緒にいる赤葦先輩を見ては
柔らかいその表情に目がいった。
たまに一人の先輩を見たけれど、
その先輩はやっぱり無表情で静かな顔で。
その違いに勝手に面白くなっているうちに、
どんどん時間だけが経っていた。
「なぁ、Aは今度の週末何すんの？」
『どうしたの、急だね』
「いやぁ、ずっと聞こうとは思ってたんだけどよ」
もう桜もすっかり散って、緑が増えてきた頃。
体育館の点検だとかでバレー部が休みの日。
久しぶりに光くんと一緒に帰ってる時だった。
夏が近づいてるとはいえ、20時を過ぎた空は暗くて。
隣を歩いているのに、
そっと覗いた光くんの顔は見えなかった。
『特に予定はないよ』
「お、そうか！そうか！？」
『う、うん。そうだけど…』
それでも、わかりやすく明るくなった声に。
わたしの大好きな笑顔が想像できて、
こっちまで嬉しくなる。
「じゃあ、試合！練習試合、観に来ない！？」
『練習試合？』
弾んだ声に、光くんがその試合をどれだけ楽しみにしているかが表れてる気がした。
もう一度、そっと顔を覗くけど
ちょうど街頭が反射して上手く見えなかった。
「そう！音駒とやんだけど！」
『あ！音駒って、いつも光くんが言ってるとこだよね』
「おう！3年になってからは初めてやんだよ」
トサカのクロー
セッターのコヅメ
しびれるヤックン
聞いたことある名前もあるけれど、
そういえば今まで試合を観に行ったことはない。
そんなことを思いながらニコニコと早口でまくし立てる光くんに圧倒されていると、がっと両肩を掴まれた。
やっと見えた顔は、興奮からか、ちょっと赤い。
「俺、Aに来てほしい！」
『…そりゃ、行く、けど』
「まじで！？約束だかんな！」
『…ふふ、うん、約束』
光くんはキラキラした目で、
真っ直ぐにわたしを見つめていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 212人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さな(プロフ) - ごんすけさん» 嬉しすぎますありがとうございます！励みになります✨ (2022年12月18日 19時) (
レス) @page25 id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ごんすけ(プロフ) - 大好きですありがとうございます(語彙力の消失) (2022年12月18日 16時) (レス) @page23 id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - りるるさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！今後も楽しんでいただけたら嬉しいです🧡 (2022年12月18日 15時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
りるる(プロフ) - 好きです‼︎💕 (2022年12月15日 16時) (レス) @page2 id: 6abbd94f19 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さな | 作成日時：2022年11月30日 21時
