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藤の花の家紋の家に生まれた私は、休息を取りにいらっしゃる隊員の方々と幼い頃から交流があった。
その日もちょうど、柱になられたばかりの方がいらっしゃっていた。私の仕事は主に配膳だけだったけれど、「うまい、うまい」と召し上がっていらっしゃったから、よく印象に残った。でもきっとそれだけじゃなくて、赤が混ざったオレンジ色の炎のような髪の毛が目立っていたからだろう。
最初はそれこそ、業務的な会話だった。今日のご飯は天ぷらだとか、明日は雨が降るだとか。他愛ない話だった。その頃私は送られてくる隊員や、他の方からの文の返事を書くことで忙しかったから、あまり話す時間がなかった。そのせいか私からは話しかけたことはなかった。だから突然話しかけられると、どうしても驚いてしまう。
「随分な量の文だな」
「煉獄様!?」
机に積まれた文。差出人の名はすべて男、つまりは恋文だ。まあごく稀に感謝の言葉が述べられているだけのものもあるのだけれど。
「君がそれを丁寧に全部読む必要はないのではないか?」
「いえ、私に頂いたものですから」
そういって笑うと「うむ、」と考えるような素振りをして。何か思い付いたのだろう、ずいっと一歩近づいて、
「では俺が君に恋文を送ればいい返事をくれるか?」
彼の目の中に見える私は、とても驚いた顔をしていた。
2:古い炎 ページ3
古い炎
藤の花の家紋の家に生まれた私は、休息を取りにいらっしゃる隊員の方々と幼い頃から交流があった。
その日もちょうど、柱になられたばかりの方がいらっしゃっていた。私の仕事は主に配膳だけだったけれど、「うまい、うまい」と召し上がっていらっしゃったから、よく印象に残った。でもきっとそれだけじゃなくて、赤が混ざったオレンジ色の炎のような髪の毛が目立っていたからだろう。
最初はそれこそ、業務的な会話だった。今日のご飯は天ぷらだとか、明日は雨が降るだとか。他愛ない話だった。その頃私は送られてくる隊員や、他の方からの文の返事を書くことで忙しかったから、あまり話す時間がなかった。そのせいか私からは話しかけたことはなかった。だから突然話しかけられると、どうしても驚いてしまう。
「随分な量の文だな」
「煉獄様!?」
机に積まれた文。差出人の名はすべて男、つまりは恋文だ。まあごく稀に感謝の言葉が述べられているだけのものもあるのだけれど。
「君がそれを丁寧に全部読む必要はないのではないか?」
「いえ、私に頂いたものですから」
そういって笑うと「うむ、」と考えるような素振りをして。何か思い付いたのだろう、ずいっと一歩近づいて、
「では俺が君に恋文を送ればいい返事をくれるか?」
彼の目の中に見える私は、とても驚いた顔をしていた。