11話: 聖小町 ページ13
昼休み。
いつも人の少ない図書室には、珍しく数人の生徒が訪れていた。
私は今日も図書委員の仕事だ。
「はい、貸出ね」
私はいつものように生徒から本を預かり、バーコードをスキャンしていく。
その女子生徒が借りたのは、恋愛ものの長編小説だった。
前に私も読んだが、初々しい二人の感じがよく表現されていて面白かったのを覚えている。
でもいいのかしら。それ、途中でベッドシーンあるわよ?
心の中で呟く。勿論口に出しては言わないけど。
ありがとうございます、と彼女は礼儀正しく会釈をして図書室から出ていった。
さっきから貸し出しの前に並んでいた生徒たちの列が途切れる。
私は軽く図書室の中を見回す。
そろそろ約束していたあの子が来るころかな?
うーん、今日も図書室はのどか……ん?
なんかいる。静かは静かなんだけど…なんか寝てる。二人。
またか…
残念なことに、その二人には見覚えがある。
「こら!寝ちゃだめでしょう!」
まずは片方を起こす。
「なんすか…せっかく柊とイチャコラできてたとこなのに…」
そ れ は 夢 の 中 で し ょ う が !
反省する気ゼロで起き上がったのは藤壺雫。無駄な巨大さとチャラさに定評のある2年生だ。
彼女を尋問しようと口を開いた瞬間、前述の柊ちゃんが「もおぉ先輩!探しましたよ!?」とやってきて回収されていった。
なんかもやもやするけど結果オーライ…か?
まあいいや。それに本当にタチが悪いのはもう一人なのだ。
「こら、和音君」
軽く小突くが、完全に熟睡している少年―渡会和音君は一向に目を覚まさない。
よくわからないが、彼にとって図書室は寝心地が良いらしく、最近居座られてしまっているのだ。
「…zzz」
なんかさらにこの子眠りが深まってる気がする。
その後さらに五分間起こしたが、起きる気配すら見えなかった。
最終的に放置。悔しい。このまま午後の授業もサボって怒られればいいんだ。
はぁ…なんだか疲れてしまった。
そろそろ来ないかなぁ、瑠里。
図書室で待ち合わせ、としっかり言ったはずなのに…
まぁ、どんくさい彼女のことだから道に迷ったりしているのだろうか。
ここでゆっくり待つのもいいかな。
…と思った瞬間、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。
次いで、こけそうになる音。
ああ、やっと来てくれたんだ。
私は一秒でも早く彼女を抱きしめたいという衝動にかられながら扉を開ける。
「もう、遅いよ瑠里」
大好きだよ、私のちっちゃな恋人ちゃん。
10人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なるせ(プロフ) - 更新終わりました! (2019年5月6日 16時) (レス) id: af1a978d4d (このIDを非表示/違反報告)
なるせ(プロフ) - 更新します! (2019年5月6日 15時) (レス) id: af1a978d4d (このIDを非表示/違反報告)
櫛鉈(サブタブ) - 更新終わりました (2019年5月5日 22時) (レス) id: 045ecd0b94 (このIDを非表示/違反報告)
櫛鉈(サブタブ) - 更新します! (2019年5月5日 21時) (レス) id: 045ecd0b94 (このIDを非表示/違反報告)
京将(プロフ) - 更新しました。ギャグ要素が抜けてしまった…! (2019年5月2日 15時) (レス) id: 8bab4445ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ