理由 ページ10
『しょうもないよ』
「Aにとってはしょうもなくないんでしょ」
そう。私にとってはしょうもなくなんかない。とっても大事なことで、とっても煩わしいことだ。
『目立って、嫌われるのが嫌で…』
言ってて何だか恥ずかしい。しかも相手はあの人気者の角名倫太郎。
『影響力ある松本さんとかに嫌われたら、きっと私クラスの女子の中で生きてけないし。それに…』
記憶の黒い部分に触れようとして、やめた。私は曖昧に首を振って「なんでもない」と呟く。他にも沢山理由がある気がしたが言語化できる感情はこれが限界だった。角名くんは「そうなんだ」と言ってしばらく考え込むような素振りを見せた。
「……あ、じゃあさ」
『うん』
彼は視線を黒板から真っ直ぐ、私に向けた。真っ直ぐすぎて逸らしたくなるがなんとか堪える。
「昼間の学校ではAに話しかけないから」
『…うん』
誠に自分勝手。だが、思ってしまった。自分で言っておきながら本当は私、角名くんと話がしたかった。
ずっと目立つから角名くんとは関わりたくなかった。でも今は彼のことを知りたいと思っている自分がいる。だから角名くんが私に話しかけてこないことが少し…いや、かなりショックだった。
「その代わり」
にぃ、と角名くんがいたずらに笑った。
「夜は俺だけと話そ」
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作者名:兎月うさぎ | 作成日時:2021年11月3日 2時