夢現の狭間【角名倫太郎】 (ページ6)

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「で、なんでAはここにいんの？」

笑いも恐怖もおさまりお互いが落ち着いてきたタイミングで角名くんは早速いちばん聞きたかったであろうことを切り出した。

『…変なこと言ってもいい？』

恐る恐る私が言うと角名くんはこくんと頷いた。多分、彼は私が言おうとしていることを全て知っている。だって、多分角名くんも私と同じだから。

『11時過ぎに、寝て。気づいたらここにいた』

2秒ほど沈黙があった。私の隣の席に座っている角名くんは少しだけ目を見開いて、そして戻した。

「俺も」
『夢、だと思う？』

変なことを聞いていると思う。というかもしこれが本当に私の脳みそだけで起こっていることだとしたら恐怖すぎる。それこそ、幽霊よりも怖い。しかもかなり寂しい。夢の中で、私の想像で創り出した角名くんに「夢だと思う？」と聞くなんて。
彼は「んー」と少し唸って、視線をちらりと、さっきから一時間進んだ時計に移してから再び私に視線を向けた。

「俺はめっちゃリアルな夢だなって思った」
『私も』
「さっきAにビンタされたときもちゃんと痛かったし」
『…ごめんなさい』
「あ、ごめん。責めたわけじゃないから」

角名くんの人差し指がさっき目を向けていた時計を指さした。

「時計もちゃんと進んでるし、空もちょっと明るくなってきたからワンチャン現実かも」
『あ…ほんとだ。空のこと気づかなかった』

今は5月のため、日の出が早い。4時はちゃんと3時よりも明るいんだ。そう考えて私はほぼ確信的に夢ではないことに気がつく。だって私は、5月の4時が3時よりも明るい、なんてこと知らないから。

「てか、これどうやって帰ればいんだろ」
『あっ！それ忘れてた！！』

思わず大きな声を出してしまって、更に自覚する。これが夢ではないのなら家に帰らなくてはならない。でも今はバスは動いていない。バス通の私は1時間かけて家に帰らなくてはならないのだろうか…。
いや、でも待てよ。私がここに来たのって…。

『もう1回、寝てみる？』
「え、それナイス」

私は角名くんが机に突っ伏したのを見て、自分も机に突っ伏す。

「Aなら多分見ないと思うけど絶対寝顔見ないでね」
『うん、分かった』

可愛いこと気にするんだなぁ、と思って私は思わず笑ってしまう。

「もしこれで家帰れなかったら俺らやばいね」
『…それは、もう、怖すぎる』
「そのときは一緒に怒られよ。おやすみ」

うん、おやすみ。