31.信者こわい ページ32
レッスン場に着いたのはいいんだけど、ちょっと聞いてくれ。
ケイさんはパイプ椅子に足を組みながら座っている。それはいい。問題なのはその斜め後ろに立つ銀星さん。立ち位置が従者かよって思ったんだけど、それが当たり前と言わんばかりに自然に行くから、ちょっと引いた。
私は二人から距離をとって向かいあうように立っていた。あ、物理的に引いてるってわけじゃなくてね?
「これをかけてこい」
ケイさんは銀星さんにCDを渡すと、それを受け取った銀星さんは何の曲だか確認することもなくセットしに行った。え?流れるようにパシリじゃん…。いいのかそれで…。
何かツッコむのも負けな気がするので黙ってた。二人にはこれが普通なんだろう。銀星さんも喜んでるしね。
なんて一人で考え込んでいると、曲の前奏がレッスン場に鳴り響いた。今更何を歌うのか知った銀星さんは、驚きの声を上げた。
「During the demiseじゃないか!女の子にケイの声質は無理だ!出せるわけがない!吉野やマイカが歌っている曲ならまだしも…」
「大人しく聞いていろ、銀星。案ずることはない。こやつは…、道化だ」
なんだよ道化って。失礼だな。
疑わしそうに渋々ケイさんの斜め後ろへと戻る銀星さんを横目に、私は息を吸い込んだ。
ここまできたら、やるしかないよね。
−−−
「嘘だろ…!?ケイの声、歌い方の癖まで全く同じで歌いきるなんて…!」
「想像以上だな。見込み違いの可能性も考えてはいたが、杞憂だったようだ」
ケイさんは満足そうに笑むと、パイプ椅子から立ち上がりレッスン場を出て行ってしまった。
まさかの展開で銀星さんと二人きりになってしまい、
何話そうかなって思っていると、銀星さんはまじまじと私を見ていた。
「…あんた、声帯どうなってるんだ?」
「ちょっとした芸ですよ。そんな大したことじゃないです」
「いやいや、普通じゃないから。さすがケイ…、こんな逸材を見つけ出すなんて…」
「あっ最終的にケイさんアゲなんですね。銀星さんってケイさんのこと好きですよね」
「好きっていうか…、俺が一方的に崇拝してるだけなんだ」
「……はっ?」
崇拝???今崇拝って言ったよね?
ケイさん確かにカリスマ性はずば抜けてそうだし、少なくとも尊敬なら分かるよ?
崇拝ってやばい、ガチの信者じゃん。
ドン引きしていると、タイミングよくケイさんが帰ってきて。労いなのか私にスポドリを手渡してくれた。
え?優しい。本当にケイさんか?
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もずく(プロフ) - いなれおさん» まずは返信遅れて申し訳ございません。温かいお言葉ありがとうございます。この通りマイペース亀更新ですが、お時間がある時に少しでも楽しんで頂けると幸いです! (2021年9月13日 21時) (レス) id: c26e1e718d (このIDを非表示/違反報告)
いなれお(プロフ) - 初コメ失礼します!マイカちゃん可愛すぎませんか!?こんな最高な作品を考えた主様はきっと神様ですね…!これからも更新楽しみにしてます!頑張ってください!! (2020年11月15日 17時) (レス) id: 2fb9f419a2 (このIDを非表示/違反報告)
もずく(プロフ) - レオンさん» こんな自己満の作品にコメントありがとうございます!励みになります!ただいま多忙で以前より更新出来ていませんが、落ち着いたらまた上げていきたいと思います。今後もよろしくお願いします! (2020年3月12日 11時) (レス) id: ca7a517b7e (このIDを非表示/違反報告)
レオン - 初コメ失礼します!!めっちゃいいです、マイカー!!ってなりました!(語彙力)更新楽しみにしてます! (2020年3月11日 10時) (レス) id: e3b363dcc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もずく | 作成日時:2020年2月9日 18時