君と笑い会えたら

3.頑固すぎ ページ4

「お願いします！」

「いや、いいってば」

「この通りです！」

「別にそんなに大したことしてないし」

「後生ですから！」

「は？何言ってるの？…大袈裟すぎ」


目の前で手を合わせて必死にせがむその姿に僕は面倒なことになったと息をつく。繰り広げられる押し問答。これには訳があった。


いつも通りスターレスに行こうと電車に乗っていると、突然「あ、」と言う声がした。近くでのことだったから、何となしに目をやれば、そこには見覚えのある人がいた。
…確かパスケース拾ってあげたんだっけ。
明らかに僕をガン見するそいつは僕の目の前まで来ると、頭を下げた。


「この前はありがとうございました」

「…別にいいよ。あのさ、恥ずかしいからそんなに頭下げないでくれる」


視線が集まってるのを感じて、そう声をかける。するとそいつは頭を上げて、真っ赤な顔をしてこう言ったのだ。


「…もし良ければなんですけど、お茶しませんか？」

「何それナンパ？」

「なっ！？なななな…ナンパじゃないです！あの…、すごく助かったのでどうしてもお礼がしたくて…」


もじもじとどんどんと声が小さくなっていくその姿に、気の弱そうなやつだし断ってればいずれ引くだろう。そう思っていた。…のだが、


「どうしても気が済まないんです！お茶くらい奢らせて下さい！」


これだ。

電車から降りて駅のホームでの続くこのやり取りに、僕はほとほと困っていた。まさかここまで頑固だったとは。これは完全に折れないなと思って、僕は思わず溜息を吐いた。


「じゃあ…」


気押されてそんなに言うのであればと頷くと、そいつは花開いたかのようにぱあっと笑顔にはった。…認めたくないけどちょっとだけ可愛い。ちょっとだけね。


「やった！！ありがとうございます！」

「ちょうど期間限定のフラペチーノが昨日出たばかりなんだよね。すぐそこなんだけど、そこでいい？」

「大丈夫です！」



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