薔薇の庭園 ページ8
パンを食べ終われば
手元にあった水をそこあたりの薔薇にかけた
「どうして頑なに彼を拒否るのさ」
『吸血鬼だから』
涼しい夜風が私の髪を揺らし
体温を奪っていく
影が ゆっくりと伸びていく
「…吸血鬼だからって傷付けて良い理由になるかな?」
『なる 人を傷付ける者は敵だ』
「なら吸血鬼を傷付ける人間も敵だよ」
『そうだ だから敵同士なんだ 攻撃し合わなきゃいけないんだ』
「……変なの」
『は?』
「君はまるで型にはまってる人間みたい
周りがそうだからそうするんだっていう人間みたい」
『実際人間だ』
「僕が言いたいのは君が型にはまってるってことだよ」
『……』
「そうやってずっと良いお嬢様を演じてきていたのかい?」
『はぁ…そうよ 悪い?』
「悪いとは言ってないよ それも人のあり方
昔 君に似た人がここにきたよ 君よりももっと人の言うことを聞く
人間なはずなのにどこか存在があやふやな人
ラミアがその人を吸血したらその血を吐いちゃったくらい
聖なる血液を持ってた人」
『……その人は今どこに…?』
「さぁね 探し物があるって言ってしばらく屋敷を探索した後消えていったよ」
『…………ヘックシュッ!』
「あ そろそろ屋敷に入ろうか 部屋用意されてるし」
『うむ ありがとう…』
「歓迎してるだけだよ」
『チシャならまだ信頼できる』
「何それ」
-sideなし-
誰もいなくなった薔薇の庭園に
存在もなく 一人の何かが現れた
赤い包帯を巻き
片目が隠れた緑髮の人間
その何かは静かに
先ほど 血に魅入られた少女が水をかけた薔薇に触れる
そうすれば まるで脆い雪結晶のように
その形は崩れ 消えてゆく
「裏切りが 屋敷におりおる…
仕方なし…しばしこの場に滞在しようか」
薔薇の庭園に
場違いな黄色いオトギリソウが咲いていた
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作者名:もずく。 x他2人 | 作成日時:2017年11月20日 20時