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オフィスに戻ると、ふと深澤先輩と目が合う。
…う、気まずい。
しかし当の本人は私に近づいて、手を伸ばしてきた。
「…え、な、何です…」
「花びら、ついてる」
「え」
優しく髪に触れられたかと思えば
彼の手には花びら。
「外で食ってた？」
「広場で食べました」
「え、1人で？」
「違いますよ、康二くんとです。」
「康二と？…お前ら仲良くなんのはえぇよ」
「そうですかね…康二くんが上手いんじゃないですかね、人との距離感とかを掴むのが」
「それもそうか」
はい、取れた。
と頭上で声が聞こえたかと思ったら、
頭を優しく撫でられる。
あぁ、もう、ずるい。
…そんなの、諦められなくなっちゃうじゃん。
涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
やばい、溢れちゃ…
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「あー！Aちゃんここにおった！」
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ぎゅう、と後ろからいきなり抱きしめられる。
え？
え？？？
「こ、康二くん」
「ちょっと、さっきいきなり居らんくなったからビックリしたで？」
そう言いながら私の腕を引っ張る。
……もしかして、助けてくれた？
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「…Aちゃん、大丈夫？」
「……ごめん、ありがとう」
「なあ」
「ん…？」
「ふっかさんのこと、好きやんな」
「え、 ？……うん」
「しかも多分、こないだ初めて知ったやんな」
「…うん」
「俺のせいで…ほんまごめん」
「いや、いずれ知ることになるんだし、良かったよ？ありがとう」
「…嘘つきやな」
困ったような笑顔で私の顔を包み、見つめる。
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「そんな顔じゃ、誰も信じひんよ」
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彼は、私をまた思いっきり抱きしめた。
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春は出会いの季節。
他の季節とは違う、緩くて暖かな光は私たちを優しく包み込んでくれる。
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作者名：もずく | 作成日時：2020年5月9日 23時
