十二話 ページ14
まずはお館様に挨拶をする。そして事情を話した。
「…やっぱり、あの子は君の兄だったんだね」
『顔を見ていないので、断言することはできませんが』
九分九厘兄だとおもいますと述べ、いくつか言葉を交わした後、お館様のもとをあとにした。
今は霞柱…兄は、御屋敷のある一室で休息を取っているらしい。
おそるおそるその部屋に向かう。
この感覚はいつぶりだろうか。兄に会えるかもしれないという高揚感と、一方の兄は死んでしまっているという事実を突きつけられる恐怖心。
忘れられていないか、嫌われていないか…どう思われているのかという不安。
そもそも私の存在は、捨てられてからどういう扱いになったのだろう。
深く感嘆したり心動かされることが暫く無かった私の心は激しく揺さぶられ、明らかに挙動不審になって手を擦り合わせていた。なにかに触っていないと落ち着かない。
全集中の呼吸をやめ、すぅ、と深呼吸をする。
もし兄ではない、同姓同名の違う人ならば、後で兄のところに行ってみようか。母になんと言われるか分からないが、兄たちの顔を一目見たかった。
本当に兄だったら。なんて声をかけよう…
もじもじしていると、目の前の襖がスっと開いた。
「…」
『…あ』
私より背が高く、見下ろす瞳は淡い青緑色だった。
『あ、あのっ…』
「えーと…」
間違いない、兄だ!昔のような優しさに満ちた瞳…ではなくなっているものの、顔を忘れるはずなんてない。
『にい…』
「…誰?」
ガン。頭を巨大な金槌で殴られたような感覚。
…忘れられていた。
忘れられることは覚悟はしていたものの、衝撃は凄まじかった。
「どこかで…会った?…わからないな…」
どうする?ああ、もうどうしようもない。名乗れば、思い出すだろうか?昔のようにむい兄ちゃんと呼べば?
怖い。目の前の少年が。血の繋がった兄が。
全身が身体の芯から震え上がり、汗をダラダラとかいていた。空けられた口からは空気が漏れるのみで、手は行き場を失う。
「…えっと。僕今休憩してるんだけど」
『えっ、あ』
「何か用?」
『わ、わたし、は』
どうするのが正解なのか、どうするのが最善なのか。何もわからないまま。
『A…Aといいます、私の名前です』
「そう…それで?」
『っ…失礼、します』
部屋の前から逃げ出した。
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シャンプー(プロフ) - ゆーさんさん» 不快に思われたのなら申し訳ありません。注意書きを付け足しておこうと思います。 (2019年8月9日 12時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
ゆーさん(プロフ) - あくまで二次創作ですので、時透母についてはこういう人なのだというような感想を持たないようにお願いします。 (2019年8月8日 17時) (レス) id: 91a8b31b94 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー(プロフ) - にこちゃんさん» ありがとうございますー!!!私も時透くん推しです!!じわじわ書き進めておりますのでまったりお待ちくださいませ…!! (2019年7月22日 21時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
にこちゃん - 私、推しが時透君なので嬉しいです!更新待ってます!応援しています!! (2019年7月22日 21時) (レス) id: 5d74a38634 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー(プロフ) - ゆずさん» ありがとうございます!!!時透くんかっこかわいいですよね!頑張ります…!! (2019年7月22日 17時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャンプー | 作成日時:2019年7月22日 1時