検索窓
今日:2 hit、昨日:21 hit、合計:13,302 hit

写真の中のあなたは ページ32

「これは……?」
Aらが目にしたのは、一つの革製カバンであった。黒革の、見るからに高級そうな、カバン。
「これは、私のものです。……見てほしいのは、この中のもの」
そう言うと、駅長はスプーンを置き、カバンに手を伸ばした。
白い手袋に包まれた手が鍵を解いていく。
「……どうぞ。これは、写真です」
「写真?」
駅長がカバンの中から取り出したのは、何枚かの写真であった。まだきれいな、現像したてのような質感の写真。
渡されたAは、写真に質問がつかないよう、慎重に手に取った。
そして、写真を注意深く見る。
「……あの、この方は……?」
Aが見た写真には、ある一人の子供が映っていた。見たこともない、だがかわいらしい女の子。写真の日付は、今日になっている。
駅長は、ひとつ息を吐くと、
「……母親、です」
と言った。



「母親?」モモタロスが首を傾げる。
ウラタロスは何かを察したようだ。
キンタロスはAのほうを見つめ、リュウタロスはウラタロスに「ねえ、どういうこと?」と訊ねている。
Aは、黙ったままだ。
「はい。母親……Aくんの、母親です」
「……え、どういうこと?Aちゃんのおかーさん?」
「そうです。厳密には、Aくんのお母さん、になるはずの人です」
「わたしの、お母さん……になるはずの、人……」
Aは呆然とした。まだ実感が湧かないらしい。
「ええ。……まだ実感が湧きませんね?」
「はい……」
Aは正直に頷く。
それを見た駅長は、「でもご安心」と励ました。
「いいですか。Aくんの母親が存在するようになった、ということは。ということはですよ。これはつまり、Aくんの時間が現れた、ということになります」
「……………………え?」
駅長の声に数秒遅れて反応し、そのまま目を丸くするA。驚きのあまり言葉が出ず、何度も何度も「え?」を繰り返した。
「どういうことだよ」
一から説明しやがれ、とモモタロスが言う。
駅長はカバンの持ち手をくるくる回しながら、答えた。
「つまりですね」
あのイマジンによって殺された母親が、Aくんがイマジンを倒すことでまた存在するようになった。
「そういうことです。要は、大団円。めでたしめでたし」
__一人で拍手をはじめる駅長を前にしてもなお、Aの目は丸いままだった。

タイムパラドックスの主人公→←あなたのためのプレゼント



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
30人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

星砕(プロフ) - にわとりさん» すみません、お友だち申請とかはよく分からないので、申し訳ないのですができないです……すみません!小説のほうは、受験生ですので難しいかもしれませんが、時間のある時に読んでみます!お誘い、ありがとうございます!これからも応援、よろしくお願いします! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 567175ed17 (このIDを非表示/違反報告)
にわとり(プロフ) - ありがとうございます..!あの、宣伝とかじゃないんですがよければ私のお話読んで意見とか良ければ下さい..!また、友達申請を送っても大丈夫ですか? (2019年8月26日 22時) (レス) id: b7c5b25082 (このIDを非表示/違反報告)
星砕(プロフ) - にわとりさん» コメントありがとうございます!番外編は前々から書きたいと思ってました!まだ続きますので、まだ少しだけ、異時点の少女の物語にお付き合い下さい! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 567175ed17 (このIDを非表示/違反報告)
にわとり(プロフ) - 少しの続きが見られて嬉しいです! (2019年8月26日 22時) (レス) id: b7c5b25082 (このIDを非表示/違反報告)
星砕(プロフ) - 柚子×2さん» コメントありがとうございます!イマジンは癒やされますよね!実は私いまさら電王にはまってしまいまして……電王面白いですよね!応援ありがとうございます! (2019年6月10日 22時) (レス) id: 567175ed17 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:星砕 | 作成日時:2019年5月4日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。