その従者、異時点につき

いけるかもしれない ページ26

……腕が鳴る。
モモタロスはひとり、デンガッシャーを手にしてそう感じた。
遠距離攻撃、つまり銃撃などが得意でなく、また戦略をたてるのも苦手なモモタロスは、自慢の剣撃でギガンデスを討つこととなった。不満なんてない。自分の能力を生かせられる、最高のチャンスだ。
「久々に暴れられるぜ」
そう呟いたとき、
「……それでは、皆さん。お願いしますね」
Aが、合図を出した。

※※※

ギガンデスには最早、理性は残っていなかった。
意思も知性もない、ただ暴れるだけの存在。
だからこそ、人々に危害を加える。
「……はあっ！」
Aは、廃工場近くのビルから飛び降りた。落下速度は増していき、Aは角度を変えながらギガンデスに飛び込んでいく。
手には、いつもの剣。鋭く研がれたものだ。今までこの剣で、沢山のイマジンらを倒してきた。
「いけっ！」
しかし今回は、斬りつけることはしなかった。
Aは、自身が確実にギガンデスの上に落ちると確信すると、勢いをつけて剣を真っ逆さまに解き放った。
剣はまっすぐに、ギガンデスを狙う。
「………………！！！」
風圧とともに、大きな絶叫が響く。Aは鼓膜が破れないよう耳を手で押さえながら、痛みに暴れまくるギガンデスの上に着地した。
見た目が肉片そのものだったからか、ギガンデスは柔らかく、衝撃をいい具合で吸収してくれた。
「……よし」
Aはひとりでガッツポーズを決めると、突き刺さった剣をなんとかして抜き取った。
大量の血が、弧を描き噴いて空に舞う。
剣は、丁度ギガンデスの眼球の辺りに刺さっていた。痛がっている。痛覚があることが判明した。
……すると。
どかん、と近くで、大きな衝撃音がした。
砲弾だ。砲弾が、ギガンデスの身体に見事、着弾した。
「……やった……」
Aは、血に濡れた顔を拭いながら、空を仰ぎ見た。
空には、まるで龍のごとくデンライナーが飛んでいた。動きは上下しており、本物の生き物のようである。
そのデンライナーから、砲弾が放たれたのである。
またもや、ギガンデスは痛がった。暴れまわり、Aは足場が不安定になりふらついた。
それでもAは笑んだ。ギガンデスが痛がっている。それだけで、Aは嬉しかった。
ただ仇を討つだけじゃつまらない。どうせなら、私と同じ苦しみを味わってから死ね。
残酷で切実な願いが、Aの意志を固くした。

それぞれの働き→←それぞれが動き出す時

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す