おまじない ページ38
目覚めるとまぶたが重い。
昨晩泣いたせいで少し目が腫れていた。
良かった……今日が休みで。
ただし、お休みなのは映画の撮影だけ。
つまり健くんには映画とは別のお仕事があるらしい。
ドアを開けて廊下に出たら、
ちょうど健くんも部屋から出てきたところだった。
「おはようございます」
「おはよ」
朝から眩しいくらいの笑顔。
一方の私は腫れた目で……
恥ずかしいので前髪を抑えながら隠した。
「あの、昨日はありがとうございました」
「いーの。いつでも頼ってよ？」
「そうだ、これ返すよ」
「あっ……」
目が腫れた原因のやつ…
違う違う、そんなの携帯のせいじゃないんだ。
「マネージャーの2人にも報告しといた。
とりあえず、あの人からのメールはマネージャーにも見れるように設定したから」
さすがの対応力。
一晩でそんなことが行われていたとは……
「それと、俺の連絡先。入れといたから」
アドレス帳を開くと“長本さん”の下に
“三宅健”
という名前が並んでいた。
「わ……ありがとうございます！」
たった1つアドレス帳に名前が増えただけ。
でも、その名前が“三宅健”だからすごく輝いてみえる。
「じゃ、行ってくるね」
目尻に皺を寄せてニッと笑ってくれた。
「いってらっしゃい」
見送ったあとで、
こっそりと 三宅健“さん”と付け足して、
しばらく眺めてニヤニヤしてたとこは誰にもナイショだ。
･― Another side→←･― Another side
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作者名：ﾖｰﾘﾝ | 作成日時：2020年6月27日 1時
