虹色の恋。Ⅰ (ページ5)

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「いただきます」

「ほんま、ごめんなぁ……いただきます」

彼は、申し訳なさそうな顔をしてチラチラと何度も私の顔色を伺いながら、モグモグ食べている。

「やっぱAの料理うまいわぁ……」

「……」

「機嫌、直してやぁ……」

彼の捨てられた子犬みたいな目が、かわいい、なんて思ってしまった。

なんだか、あざとい彼に負けた気分で、くやしい。

「……明日は？」

「欲しいです」

「残してきたら、明後日から作らないからね。」

「それは、もちろんっ！絶対に完食させていただきますっ！」

「それなら許す」

彼はぱぁぁ！と表情が明るくなって、よかったぁーと、安心した表情でパクパクご飯を口に運び始めた。

うんまーと変なところにえくぼを作っている彼を見ると、作りがいがあるな、と毎朝実感させられる。

でも、いつも悪戯やら仕事によるドタキャンやら、今日みたいな伝言ミスで振り回されてる私は、明日こそは、仕返しをしてやろうと決めた。

急いで身支度を整えて、午前8時。

すぐに私の出勤時間はやってくる。

「いってきます」

「いってらっしゃーい、あ、今日の夜、練習行くなー。」

「了解。」

彼のお迎えはもう少しだけ後だそうで、部屋からのんびりした声がきこえてくる。