虹色の恋。Ⅰ (ページ3)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:57,147 hit

2 ページ3

毎日朝5時に私の目覚ましは鳴る。

洗顔して、歯磨きをして、着替えて、セミロングの髪を一つにまとめて、身支度完了。

メイクはどうせ汗で流れるから最低限。

部屋を出て、隣の部屋をノックする。

そうすると、彼が部屋から出てくる。

そう、彼は同じマンション、しかも隣の部屋に住んでいるのだ。

二人とも同居したいけどお互いの時間もほしい、ということで、お互い合鍵を持っている半同居状態。

普通は嫌なのかもしれないけど、私はこの距離感がちょうどいい。

多分、お互い考え方が似ているから、付き合っていて楽なのだと思う。

似ている、なんて、認めたくないけれど。

「……ん、おはよ、」

「おはよう。」

「なんか、眠そうだね。」

「昨日呑みすぎてん……」

元インストラクターの職業病だろうか、彼と走っているとインストラクター目線になってしまう。

「今日は、私も一緒に走るから。」

「……はーい、」

さすがに男女で体力差があるから、彼が本気で走れそうなときは私は自転車。

私が伴走しても、自分の体力が持つと判断したら、走っている。

ただそれだけなのだが、どうやら彼は私が走るということを、
私が彼のことを舐めている、
と捉えているらしく、伴走すると知ると、いつも露骨に不機嫌そうな、不満そうな顔をする。

駆け足で階段を降りて、彼の行きたいコースに合わせて30分走る。

もっと走りたいけど、それ以上はたまに通学する中高生と遭遇するから、という理由で諦めている。

「ペース上げすぎ。」

「いや、行ける」

「ダメ。仕事に支障出るよ。」

負けず嫌いな彼は、私の伴走が付くとペースを上げがちだ。

今も、いつもより明らかに息が上がっているのに無理矢理ペースを上げようとしていた。

普通、彼女と走っていたら、彼女に合わせるんじゃないだろうか。

普段は意外と結構そういうところには気がつく人なのに、負けず嫌いが発動すると、女性への気遣いはすっかり忘れてしまうらしい。

「それでも上げるっていうんなら、坂本さんに言いつけるけど。」

「ごめんなさい」

困ったときは、必殺、坂本さん。

坂本さんというのは、彼のジムのインストラクターで、彼は坂本さんに注意されるのがかなり嫌いなのだ。

この言葉は、こういうときの必殺技として、かなり重宝させていただいている。