虹色の恋。Ⅰ (ページ20)

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夢の国 Yellow 1 ページ20

夏が終わりに近づいて、通勤時間にランドセルを見るようになると、私は毎年同じ質問をする。

「ねぇ、淳くん？」

「んー？」

「また、あの季節がやって来ますよ？」

「あぁー、そうやねぇ。」

あの季節。淳くんの誕生日。

付き合いはじめてからの恒例行事。

お祝いをかねて淳くんも私も大好きな夢の国へ行く。

「今年はどうですか？」

淳くんがデビューしてからは、忙しくて行けないときもあるけど、時期をずらしてでも年に一回は必ず行ってる。

他の行事はおざなりでも、これだけは続いている、私たちの約束。

「ここかここ、どう？」

「了解、こっちで。私も休みとる」

今年はちゃんと、ハロウィンイベントに参加できる様子。

仮装期間は混むと踏んで、そこはずらした、平日に。もちろん私にも仕事があるから、有休を取って。

だがしかし、緊急事態発生。

「ねぇ待って、今年全日仮装オッケーじゃん！どうしよ、混む！有休、取っちゃったし！」

「しゃーないな、するか？仮装」

にやっと笑った淳くんの顔は、いたずらっ子そのものだった。

「え、嘘でしょ？！バレない？大丈夫？！」

「別に行けるやろ、一回仮装してみたかってんなー」

この男、普段は真面目なくせに、夢の国のことになると急に楽観的になる。

好きなことに対して盲目になる、というのは本当らしい。

衣装は俺が準備するな、とルンルンな淳くんを尻目に、私は心の中でこっそり突然のキャンセルに備え、急に誘っても来てくれる友達を頭の中でピックアップし始めた。