再会 ページ32
結局田中が車を出してくれる事になり、みんなで田中の家に向かった。
田中の車は軽なので、6人で乗るにはかなりきつかった。
私は助手席に乗り、後ろで4人が寿司詰め状態になっている。
「お前ら狭いって！」
「俺は細いから狭い訳ないだろ！ガリさんが幅取ってんだよ！」
「いくらなんでもそこまで取ってねえわ！」
「ガリさん、優斗、暴れないで。俺が潰れる」
「それはシンプルにごめん、作ちゃん」
男子高校生がぎゅうぎゅうな状態で言い合っているのは正直かなり面白かった。
そうこうしてる間に田中家に到着。
田中が家の鍵を開けるや否や、家主の許可もとらず4人は勢いよく中へ入って行った。
「大変っしょ。あの人たちの世話係。」
「今日だけは田中に同情する。」
私は田中に続いて家に入った。
中は既に混沌としていた。
正座する涼くんを4人が立ったまま囲っていたのだ。
なにこれ、なんかの儀式？
「…田中さん…なんで連れて来たの…」
既に涙目の涼くんが田中を見つめていた。
「すまん。ばれちゃった(笑)」
本当にノリが軽いな。この人は。
「はしもっちゃん！なんで出て行くんだよ！」
声を荒げる瑞稀くん。
「…みんなに合わせる顔が無くて…しばらく離れて反省して頭を冷やそうと…」
「はしもっちゃんがやってんの反省じゃなくて逃げだからな？分かってる？」
責める蒼弥。
「…ごめん」
「俺らにももちろん謝って欲しいけど、もっと誠心誠意謝るべき相手は他にいるでしょ。」
そう言って作間さんは私の方をちらっと見た。
「ごめん。Aちゃん。俺…本当にやばい事したと思ってる…。俺のせいでAちゃんを傷つけて…。許してもらえるようなことじゃないのは分かってる。実際その言葉を聞くのが怖くて逃げちゃったところはあるから。…とりあえず本当にごめんなさい。」
涼くんは土下座した。
涼くんのせいで私が辛い思いをすることになったのは確かだ。
許せる訳がないと思う。
でも…
「Aちゃん、疲れてない？料理手伝うよ」
「今日も美味しかったよ。ありがとう。」
「いつも一生懸命で可愛いくて優しいAちゃんが好きだよ」
やっぱり優しかった涼くんが頭に浮かんで、私はとても彼を責める気にはなれなかった。
「…顔を上げて、涼くん。」
私の言葉で顔を上げた涼くんは今にも涙が溢れそうだった。
「…涼くんは最初からずっと優しかったよね。私はその優しさに救われてた。今回の事は許せないけど…それでもちゃんとやり直したい。」
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作成日時：2023年3月22日 22時
