キャッチボール ページ24
放課後、指定された公園に向かうと、既に優斗がいた。
「ごめん、遅かった？」
「いや、俺が早く来ただけだから。はい、グローブ。」
「ありがとう。…私、全然できないよ？」
「近くでやるから大丈夫。やろうぜ。」
こうして始まったキャッチボール。
上手い人の球というのは取りやすいらしく、どれほどの豪速球が来るのかと優斗の球に身構えていたものの、全てキャッチする事ができた。
逆に私の球は四方八方へ飛んでいき、優斗を走らせる羽目に。
「ごめん！また変なところに！」
「大丈夫！俺体力はあるからいくらでも走る！(笑)」
しばらく続けたあと、さすがに優斗がバテたので休憩した。
「ほんとに走らせまくってごめん…」
「いいよいいよ。A良い顔してたし。」
「そう？」
「うん。最近A険しい顔してる事多かったからさ〜。やっぱ運動って良いよな。A、超すっきりした顔してるぜ。」
「険しい顔か〜…無意識だったな〜…」
多分涼くんの素っ気ない態度とか、告白とか、そんな事についてぐるぐる考える事が多かったからそれが顔に出てたんだろうな。
優斗からしたら全部お見通しって訳か。
「こうやってキャッチボールしたなぁ…」
「え？」
「…覚えてないか…。」
「覚えてない…ってどういう…」
「なんもない！あともうちょっとだけやってから帰ろうぜ！ほら、立ってA！」
「あぁ…うん…」
優斗の言葉が少し引っかかったけど、気にしない事にした。
余計な考え事を増やしたくなかった。
休憩後は少し上達したのか、なんと5回も続いた。
投げる時に優斗も
「ナイスボール！」
「上手い上手い！さすがA！」
と声をかけてくれたのでいっそう気持ちよく投げられた。
疲れでまた私の球のコントロールが悪くなってきたところで
「この辺で帰るか。」
と優斗が言ってくれたので私たちは帰ることに。
「…Aに何があっても、俺、絶対Aの味方だから」
「え、何急に(笑)」
優斗が急に真剣な事を言ってきて思わず笑ってしまった。
「なんとなく言っとこうと思って(笑)」
私に釣られて優斗も笑う。
「A、家まで競争な。俺が勝ったら晩飯肉で！よーいスタート！」
「勝たなくても肉にするよ…ってもう行っちゃった…」
元気だなぁ…優斗は。
取り敢えず今日の晩御飯は決定したのでスーパーでも寄って帰ろう。
お肉といっても色々ある。
私は遠くなっていく優斗の背中を見ながら、リクエストの肉をどう調理するかを考えた。
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作成日時：2023年3月22日 22時
